映画の世界で黒澤、小津、木下、市川監督の作品というと
高い評価を受けますね。私も好きな作品が沢山あります。
杉浦日向子という人は、たった一人でそれらと並ぶ
いや、それ以上の偉業を成し遂げた存在だと思うのです。
例えば「百物語」、20代から30代前半にかけて
完成させているんですね。
これは漫画という括りを超えてしまっていて
書の世界ですね。
一コマ一コマが独立しています。
なので、サラサラと読み飛ばすことが出来ない。
とてつもない集中力で構成されていて
シーンの刈り込み、省略が極限に達しているので
生半可なことではついていけないくらいです。
身体的な事情もあったようですが、非常に速い時期に
引退宣言をされてましたね。
その後はエッセイとかテレビ番組出演を
”ご隠居”仕事で余技として楽しまれていました。
よく「江戸からやってきて、江戸に帰っていった」と
形容されますが、
按配、時分ということを大事にしていた人ですよね。
「さあさあ、もうよい頃合いでしょう。ではこの辺でお暇しますよ」
といった感覚でしょうか。
今の日本ではあらゆることが無粋になってしまったので
ちょっと早めにさよならをされたのだと思います。