小津監督との顔合わせ2回目の「麦秋」(1951年)
キネマ旬報ベストテンで第1位でしたが
今現在では「晩春」と「東京物語」に挟まれて
やや地味な位置付けになっているような気もしますね。
この作品は言ってみれば
家族群像劇、なんですよね。
冒頭の朝食シーン、
原は中央でどんと構えていて
それ以外の家族が頻繁に出入りします。
原のみにスポットが当たるのではなく
登場人物それぞれに結構セリフが与えられていますので
ややせわしない(場面の切り替えが多い)気もしますが
そこがこの映画の狙いどころ。
この辺りは今でも当時の面影残ってますよ。
雰囲気の良い喫茶店(カフェ、じゃなくてね)があったりして。
原の親友役、淡島千景。
持ち味のサバサバした演技で楽しませてくれます。
本作は全体に軽くて笑いを誘うシーンが多いですね。
(後半になると急転、シリアスなのですが)
原節子も一番自然な振る舞い(の役柄)ではないでしょうか、小津作品のなかでは。
そうよ、ね~
そうそう、そうよ~..........
(突然襖を開けて出てきた笠に驚いた三宅はこの後、後ろにひっくり返ります。
のちのクレージーやドリフのコントのようで、小津作品には珍しいのでは?)
それにしても三宅邦子の美しいこと!
この映画の見どころはシンクロ~ユニゾンなんですよね。
関係性は色々ですが(夫婦、親友)
登場人物が二人出てくるシーンで
手の動き、足の運びを完全にピタッと合わせています。
物凄く計算されてると思いますよ、この部分。
前作の「晩春」が父と娘の関係性について、
今作ではそれが家族という単位に拡大されています。
そして次作の「東京物語」では更に空間(田舎/都会)という
要素が加わるという
あまりに見事なホップ・ステップ・ジャンプ。
結論としてはしかし、
いずれもが離別、分断ということになるわけですが。
前半のコメディー調から一転して、
後半の深刻な場面との繋がりがやや不自然な気もしますが
(笠智衆が異常なほど怒りまくります。ちょっと怖いくらい)
GOODであります。