「東京物語」(1953年)は国内外での評価が高く
小津監督の最高作であるとともに、邦画洋画を問わず
映画史に残る傑作と位置付けられています。
作品について様々な分析が詳細に行われていると思いますが
そういったものに囚われず、私的印象&気づいたことなどを。
(あらゆるシーンが考え抜かれて撮影されていて
全部挙げるとキリが無いので、ごく搔い摘まんでですが)
まずはこの映画、原節子ではないんですね
主役は。
配役表をみても、原は三番手です。
主演は笠&東山の老夫婦。
むしろ原はその他の主要登場人物からは離れた存在、
(血が繋がっていない)
極端にいうと狂言回し的なポジションです。
(故に、一歩下がった位置にいるので態度に余裕がある)
笠&東山が東京で暮らす子供たちを訪ねて
尾道から上京。
迎える各家庭ではその準備に大わらわ。
長男の嫁(三宅邦子)は狭い屋内を
ちょこまか行ったり来たり。
中学生の子供も自分の机を移動させられてしまい
不満気です。
老夫婦が歓迎されていないということを示すシーンですが
ちょっとわざとらしい気も。
特に子供の取る態度は小学生の低学年のような言動になっていて
かなり不自然な気がします。
(与えられているセリフがあまりに幼い)
戦死した次男の嫁(原)も駆けつけてきます。
小津監督お馴染みの”背中~お尻ショット”
淡島千景(次作の「早春」に出演)は
「私、お尻大きいから恥ずかしかった」と
後年インタビューに答えています。
ロケハンが入念になされたのでしょうね。
印象に残るショットが随所に登場します。
ただ場面の転換や繋ぎに用いられてるのではなく
時系列を隔てて複数回登場したり
他のショットとの関係性が練りこまれているところが
神技、です。
垂直~縦のラインでは工場の煙突や都会のビル、墓地など
水平~横のラインでは船と機関車
前者はどこまでも交わらない親子関係を、
また後者ではゆっくりと進む船が笠&東山(尾道)の象徴で
驀進する列車が慌ただしくて余裕の無い
都会(東京)を表現しているのでしょう。
こちらは体よく熱海の旅館へ追い出されてしまった
笠&東山。
この時、東山は既に体調が悪い
~後の死を暗示させるシーンなのですが
この岸壁は危ない、ですね。
構図的には美しいのですが
70代という設定の老夫婦がわざわざ
平均台のようなところを歩くのはどうでしょうか・・・
(続きは明日へ)