バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

暗い、ひたすらどんよりと重い小津監督の異色作 ”東京暮色”

f:id:bkkmind:20191217084420j:plain

 

これは非常に”沈んだ”映画ですね。

ほのぼの~日本情緒的なイメージをもって観てしまうと

大きく期待を裏切られることになりそうです。

小津の戦後の作品のなかでも

異常なほどダークかつ

描き方がストレートに”意地悪”です。

 

f:id:bkkmind:20191217084820j:plain

f:id:bkkmind:20191217084848j:plain

 

主役の有馬稲子は後年のインタビューで

「もう暗い役でね。<中略> やっているあいだも、

なんか憂鬱になりましたよ、ほんと」

(「君美わしく」川本三郎著)

と語っています。

 

原節子笠智衆もいつにないほどシリアスな表情、

ピリピリしています。

 

f:id:bkkmind:20191217085549j:plain

 

有馬稲子はだらしのない男(田浦正巳)に

妊娠させられ、中絶

挙句の果てに悲劇的な最期を迎えてしまうのですが

(堕胎のために訪れた)病院のシーンの次に

元気のよい原の子供のショットを持ってきたりしてます。

 

f:id:bkkmind:20191217090121j:plain

 

いつもならコメディーリリーフとして笑いを誘う

役者陣も、この作品ではひどく冷笑的かつ虚無的です。

 

常連組のなかでは杉村春子だけが

お馴染みの”ほがらか~能天気~おせっかい”おばさんを

演じていますが、あまりに他の登場人物が暗い設定なので

ちょっと浮き上がった感じもありますね。

 

f:id:bkkmind:20191217090521j:plain

 

屋外シーンも夕暮れ~夜間の時間帯が多く

エンディングに至るまで

重く垂れこめた雨雲のような圧迫感が画面を支配する

2時間20分(1957年製作)であります。

 

www.youtube.com