バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

超が付くほどの異色作『離婚伝説』~こんなアルバムを作るのはマーヴィン・ゲイだけ

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”離婚伝説”という物凄い邦題になっている

マーヴィンの1978年作。

オリジナルのタイトルは HERE, MY DEAR

「このレコードの売り上げが慰謝料だぜ、持ってけよそら」

と(別れた)自分の奥さんに呼びかけているという、

原題もとんでもないことになっております。

 

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発売当時はLP2枚組でしたが

表&裏ジャケットのイラストも爆発炎上。

 

17歳年上の奥さんから17歳年下の若い女性に乗り換えた

当時のマーヴィンの実生活の音楽ドキュメントなのですが

曲のタイトルや歌詞も赤裸々。

 

”別れてあげてもいいけど、高くつくわよ”

(新しいあなたの恋人は若くて美しいけど、やがてあなたの全財産を

奪っていくのよ、と奥さんに警告された)

 

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まあ、そう繰り返して歌われても

リスナーとしてはどう反応していいか分からないので

発売当時は評判悪かったですね。

 

ロックやフォークと違って

ソウルミュージックは通常

プライベートな事象を歌詞にすることは少ないので

その意味でも異色の存在。

 

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サウンドもチープで宅録的な響きがあるのですが

後年、一部の評論家やファンから熱烈な支持を集めるようになります。

確かに、このような内容の作品を書いて

実際に録音し、発売までこぎ着けるというのは

マーヴィンならではの力業であります。

 

ちなみにスタジオに呼ばれて、収録曲を聞かされた奥さんは、

 

アンナ(奥さん)はコントロール・ルームでアルバムを聴いた。その間、マーヴィンは上の階のロフトにいて、決して一度も下には下りてこなかった。アンナはそこに座り、聴いて、ほとんどなにも言わずに出ていった

マーヴィン・ゲイ物語 引き裂かれたソウル」デイヴィッド・リッツ著 吉岡正晴訳

 

だ、そうです。

そりゃあそうでしょうねえ・・・

 

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(音楽も凄いが、実生活は更に激動&混迷の日々・・・実父に射殺されるという衝撃的な最期までを克明に追った大作。著者はゲイと親交があった人物で読み応え充分)