黒澤監督の1990年作。
この後にも2本撮っていますので、最終作というわけではありません。
が、この一本は明らかに
監督の”遺言”です。
自身の子供の頃、青年~壮年時代、そして葬列の場面までが描かれています。
8話構成のオムニバス形式です。
目を惹く美しいシーンは幾つもあるのですが、
(スタッフは大変だったでしょうね、草や花を仕込むのが。
ただね、いかにも”植えました”感が強いんですよね・・・)
監督の特徴でもある
役者さんのセリフを通しての
”俺の話を聞いてくれ、俺はこういうふうに考えてるんだ”
的な語り場面がかなり多く、
正直、説教をずっと聞いているような心持ちになってしまいます。
(そこが、黒澤作品の持ち味でもあるんですが)
8話のなかでは
4番目の”トンネル”というエピソードが際立って素晴らしく
私は「おおっ、これだ、これなんだよ!」と
思わず身を乗り出してしまいます。
(何度観ても良い!)
亡霊の兵士を演じているのが
頭師佳孝。
黒澤映画では常連組
(”どですかでん” ”赤ひげ”など)
ですが、
いずれの作品でも出番の長短にかかわらず、
印象に残る名優ぶりを発揮しています。
ここでは顔面が骸骨メイク、
なので表情の変化とかは出しにくいわけです。
そういう難しい場面で
瞳が芝居をしてるんですよ。
あと、微妙な身体の動かし方。
もう演者の真骨頂ですよ。
でもおよそ、それに触れた評論とか目にしたことないですね。
著名な映画評論家とかの本、何冊か読んでも。
なので、私は強く言います。
この役者さんの演技こそが
この作品の見どころなのです!
(まあ、最後の第8話が小津監督&原節子へのオマージュになってるとか
のポイントもありますが)
ともかく第4話だけでも観てください。
20分もかかりません。
以上。