映画の魅力って色々と挙げることができると思います。
よく練られた脚本、豪華スター共演、最新のCGやSFX技術・・・
では ”映像美” というキーワードで思い浮かぶ作品はというと
その筆頭のひとつはこちらかと。
言わずと知れた黒澤明の”乱”(1985)
正直に言えば、全編通して観るには
「しんどい」映画です。
欧米での評判は極めて良いのですが、
日本の著名な映画評論家や
かつて黒澤と何本も共同で脚本を書いてきた、
いわば身内の立場の人からは
辛口の評価が多いようです。
私も、この作品は映画というよりも
言い方が適当かどうか分かりませんが
「巨大なサイズの紙芝居」を見ているような感覚になってしまい
黒澤の残した作品群のなかで上位に位置するものではありません。
しかし随所に目を見張るシーンがあるのは間違いなく、
映画監督というよりは、画家として
黒澤明を捉えると
しっくりはまる162分ではないかと。
その黒澤と親交があったという
寡作なうえ、50代で亡くなりましたので
残された本数は少ないですが、まさに映画界の巨人的存在。
”ノスタルジア”(1983年)のこの映像世界・・・
もう言葉など不要ですね。
著名なノンフィクション作家
柳田邦男の著書 ”犠牲 サクリファイス”
文中にタルコフスキーの遺作 ”サクリファイス”(1986年)について
触れられた箇所があります。
この作品には
火と水のシーンが頻繁に登場します。
火を消さないためには水を遠ざけねばなりません。
身体が水に浸かったら
その火を高くかざすことが求められます。
人がこの世を生きるために
何かを守るために
献身、犠牲、生贄が必要とされているとしたら?
そうであれば、我が身か
もっとも自分が大切にしていた何かを
焼かなければなりません。
それは神や悪魔との契約なのですから・・・
タルコフスキーの世界を真に理解するには
私のように特に信仰する宗教を持たない人間には
とても及ばない部分があります。
黒澤はタルコフスキーのような
タルコフスキーは黒澤のような
映画を撮りたかったのかもしれませんね。