バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

”覚えていない”迷宮世界 桐野夏生の「柔らかな頬」

 

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精力的に作品を発表している

桐野夏生の1999年著作。

 

これは渾身、超絶の一冊で

”棺桶に入れる書籍”の筆頭ですね。

 

メインのテーマは幼女失踪事件で

母親と家族、母親の不倫相手、元刑事など

様々な人物が登場し、

それぞれの視点で事件が再現~

語られていくのですが

その詳細はことごとく食い違い、

物語は混迷の度合いを深めていきます。

 

主な舞台は北海道に置かれているのですが

この作品で描かれているのは

風光明媚な、自然の美しい、

北の大地ではなく

まさに魔界そのものです。

 

直木賞を受賞しましたので

書評等は多数あるのでしょうが

この作品世界を文字で伝えるのは不可能でしょう。

 

音楽で例えるならば

この感触です。

 

PETER GABRIEL    Intruder

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頁をめくる度に

氷柱を読者の心に

打ち込んでいくような。

 

通常のミステリー小説とは

肌合いが全く違いますし

いわゆる犯人捜し小説でもありません。

(その部分を期待すると消化不良になるかも)

 

文庫本ですと上下巻2冊ですので

かなりのボリュームなのですが

ダレる箇所は皆無です。

 

私は際立っての

傑作だと思います。

 

「普通仕立て」の世界に飽きた方は

是非どうぞ。

読後感が良いかについては

保証しかねますが・・・