巨匠ヒッチの1970年代に撮られた
晩年の2本、
どちらも大傑作!というわけではありませんが
テンポも快調で、一見の価値大いにあり。
1972年製作の ”フレンジー” は
ヒッチにとって久しぶりの英国ロケということで
気合充分という感じ。
幾つかのシーンで
過去の自作のリメイク~アップデート
が為されていて、ファンの人は興味深いところですね。
このカットは ”サイコ” の70年代バージョンといったところでしょうか。
犯人をじわりじわりと追いつめる警部ですが
家に帰ると奥さんが、見た目凝った(しかしとても食べられない)
料理をこれでもかと勧めてきます。
話の進行がキビキビしていて、ダレるところがありません。
流石であります。
それから4年後に作られた遺作の ”ファミリー・プロット”
シリアスな内容かと思えば、いたって明るいライトコメディーです。
偽占い師のバーバラ・ハリスと恋人のブルース・ダン、
犯人一味を追う途中での車のアクシデントシーン。
ドリフターズの「もしものコーナー」のようなベタな演技が楽しめます。
全編通じて、バーバラ・ハリスのすっとぼけたキャラクターが
とても魅力的。
これらの作品には有名な大スター、
それもハンサム&美人~かつてのヒッチの作品に
必ず登場したような役柄は皆無です。
ですので、往年の
グレース・ケリー、イングリッド・バーグマン、エヴァ・マリー・セイント・・・
ケーリー・グラント、グレゴリー・ペック、ジェームズ・ステュワート・・・
といった面々が醸し出した
優美なムードは画面から消えています。
映画ファンは既にそういった
麗しのスター競演といった類の作品を
求めなくなっていましたので。
ヒッチは勿論それを分かっていたうえで
”どうだい、まだまだいけるだろ? まあ 観て損はさせないよ”
と軽く観客にウィンクして、眠りについたのでしょう。
軽めの仕上げで幕を閉じるというのも
粋、ですね。