当時としては画期的な
アフリカロケを敢行した
羽仁進監督の1965年作品
”ブアナ・トシの歌”
主演は後に寅さんシリーズで国民的俳優になる
渥美清です。
渥美清の役柄は
日本人研究者のためにプレハブ住居を建設する技術者。
現地の住民に協力を求めますが
当然のごとくカルチャーギャップが続出します。
当初は苛立ちや怒りを隠せない渥美でしたが
最終的には村人の力を借りて
住宅が完成します。
渥美が現地を去る前の晩に
村人たちは渥美に歌をプレゼントしてくれます。
”最初は分かり合えなかったが、今は心の友達だ”
と。
この映画には
おいちゃんもさくらも源公も御前様も出てきません。
ですのである意味、渥美清は芝居が出来ないわけです。
受けてくれる相手が居ませんので。
(スワヒリ語がある程度出来る設定にはなっているのですが)
従って、ぶつぶつ言いながらも渥美は自分で率先して
日々の作業を進めていくことになります。
この辺りが ”周囲におんぶしてなかなか自らは動こうとしない”
寅さんスタイルと違った、スッキリ感を生んでいます。
監督の狙いは渥美清の演技にあるのではなく
アフリカの雄大な風景や現地の文化、風習にあるのは明らかなのですが
だからこそ渥美清は力を抜いて、軽快な演技が出来たのかもしれませんね。
後年、渥美は度々
プライベートでアフリカを訪れるようになるのですが、
撮影当時の状況が1章を割いてかなり詳しく
紹介されています。
(当時、渥美と小林は親交があった)
アフリカに魅せられた芸能人として
もう一人思い浮かぶのは
長さん、ドリフターズのリーダーだった
生前になんと29回!も
渡航しているそうです。
アフリカへの熱い想いは
自伝などでも語られていますし
テレビのドキュメンタリー番組も制作されました。
ご子息の書かれた
一緒にケニアへ行く計画もあったようです。
(息子さんの体調が思わしくなく実現はせず)
今頃はお二人、
天国で喜劇論に加えて
アフリカの話題で盛り上がっていることでしょう。