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タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

「狂った目」対決 仲代達矢 ”野獣死すべし” VS 山崎努 ”悪の紋章”

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”あいつ、狂った目をしているからね”

 

映画監督の五社英雄が俳優の仲代達矢を評した言葉です。

(「仲代達矢が語る日本映画黄金時代」/春日太一著より)

 

そんな仲代の ”眼技” が存分に楽しめるのが

野獣死すべし”(須川栄三監督/1959年)

 

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仲代は大学院生、教授の受けは良いのですが

彼の隠された素顔に同級生の団令子は気づいています。

 

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実は彼は金銭のためなら

殺人や爆破行為などを何のなめらいもなく実行する

犯罪者だったのです。

 

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あくまで冷静に犯行を続ける仲代

 

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追う刑事に東野英治郎と小泉博

 

この頃仲代はまだ20代の若さですが、既に貫禄充分。

細身のイメージがありますが、頬もふっくらとしていて

むしろマッチョな身体つきです。

 

院生役の団令子がややミスキャスト、小泉博がちょっと弱いかな

という気もしますが、製作年が1959年とは思えないモダンな感触。

仲代の演技と監督のセンスの良さでしょう。

 

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その仲代の俳優座の後輩

山崎努の ”悪の紋章”(堀川弘通監督/1964年)

 

黒澤監督の  ”天国と地獄”  出演で注目が集まっていた山崎が

罠に嵌められた刑事役を演じています。

 

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刑務所を出所した山崎がヤクザを拷問する場面など

相当に暴力的です(時間も長い)

確かに目つきが尋常ではありません。

 

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また、謎めいた役柄で

岸田今日子が出ているのですが

これまたいつにも増して独特の存在感を発揮。

 

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前半部分は快調なのですが、人間関係が複雑で

後半になると強引な展開になってしまい

スッキリ感が薄くなるのが残念。

 

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ホラー映画のような場面まで登場します。

新珠三千代がこんな演技をするのは珍しいですね・・・

 

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さて、この2作品の音楽担当はいずれも黛敏郎

須川&堀川両監督はどちらも東大卒というエリート。

(才気を感じさせる斬新なシーンがそれぞれにあります)

配給は東宝、脇役の役者さんにも同じ顔触れが。

そして主演の二人が、劇団の先輩&後輩の間柄です。

 

後年、仲代は山崎についてこんな発言を。

 

”あいつは偏屈なやつで。とっても面白いやつで。私なんかやっぱり、その俳優としての生き方は、後輩だけど尊敬しますね。<中略あり>”

(同書より)

 

日本映画界きっての名優二人の

若き日の目力勝負を楽しむのも

また映画鑑賞の醍醐味ですね。