これは凄い。
女優さんの演技ということでは
多分、日本映画で一番ではないかなと。
いや、別に大声で叫んだりとか
そういう方向ではなくて。
1964年の成瀬巳喜男作品
はっきり言いまして
高峰以外はどーでもよいのですね、この作品は。
(共演者の演技が悪いというわけではありません。加山は特に好演)
あまりにも高峰の演技が完璧すぎて
ひたすら唸るだけなので。
表情や服装の微妙な変化、
それから動線ですね
室内の非常に狭い空間で
加山との距離が縮まらないように
(加山は義理の姉である高峰に好意を持っているという設定)
計算され尽くした動きをします。
野外ロケのシーンもそうなんですが
加山と二人で歩く際も、すっと距離を取る。
高峰も加山を好ましく思っているわけですが
そう簡単にはイエスとは言えないわけです。
その葛藤を身体のラインと
ベクトル(加山の真正面な愛情表現をかわすような様々な方向)
で表現しているんですね。
当然これは成瀬監督の要求なわけです。
無茶苦茶高度なレベルの数々を、さも当たり前のように言ってくるわけです。
”出来るでしょ?”
と。
で、高峰は答えられるわけですね。
サラリと。
高峰は成瀬監督の作品に十数作、出演していますが
監督が死去した際の心情を後年、このように語っています。
”成瀬さんと私の間には誰も立ち入ることができない。成瀬さんと私にしかわからない・・・変な意味じゃなくてね。だから成瀬さんが死んだ時、あぁ、私も終わった、私という女優が終わったと思った”
ここでも凄いことを言っていますね。
分からないんだ、何気なく映画を観ているあなた達や共演者には
分かるはずがないと。
そういうことを監督と私はやり遂げてきたんだ
もうそれを再現することは今後あり得ない
そう断言できるほどの頂きに私と成瀬さんは立ったのだ・・・
未見の方が居られましたら
是非に本編をどうぞ。
乱れる 予告編