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タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

成瀬巳喜男と高峰秀子~監督と女優の共同作業の頂点 ”乱れる”

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これは凄い。

女優さんの演技ということでは

多分、日本映画で一番ではないかなと。

(あと、”西鶴一代女” の田中絹代も)

 

いや、別に大声で叫んだりとか

そういう方向ではなくて。

 

1964年の成瀬巳喜男作品

主演が高峰秀子、共演陣が加山雄三

草笛光子白川由美浜美枝三益愛子といった面々ですが

 

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はっきり言いまして

高峰以外はどーでもよいのですね、この作品は。

(共演者の演技が悪いというわけではありません。加山は特に好演)

 

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あまりにも高峰の演技が完璧すぎて

ひたすら唸るだけなので。

 

表情や服装の微妙な変化、

それから動線ですね

室内の非常に狭い空間で

加山との距離が縮まらないように

(加山は義理の姉である高峰に好意を持っているという設定)

計算され尽くした動きをします。

 

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野外ロケのシーンもそうなんですが

加山と二人で歩く際も、すっと距離を取る。

高峰も加山を好ましく思っているわけですが

そう簡単にはイエスとは言えないわけです。

その葛藤を身体のラインと

ベクトル(加山の真正面な愛情表現をかわすような様々な方向)

で表現しているんですね。

 

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当然これは成瀬監督の要求なわけです。

無茶苦茶高度なレベルの数々を、さも当たり前のように言ってくるわけです。

”出来るでしょ?”

と。

 

で、高峰は答えられるわけですね。

サラリと。

 

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高峰は成瀬監督の作品に十数作、出演していますが

監督が死去した際の心情を後年、このように語っています。

 

”成瀬さんと私の間には誰も立ち入ることができない。成瀬さんと私にしかわからない・・・変な意味じゃなくてね。だから成瀬さんが死んだ時、あぁ、私も終わった、私という女優が終わったと思った”

高峰秀子の流儀」斎藤明美著・新潮社より

 

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ここでも凄いことを言っていますね。

 

分からないんだ、何気なく映画を観ているあなた達や共演者には

分かるはずがないと。

そういうことを監督と私はやり遂げてきたんだ

もうそれを再現することは今後あり得ない

そう断言できるほどの頂きに私と成瀬さんは立ったのだ・・・

 

未見の方が居られましたら

是非に本編をどうぞ。

 

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