バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

社会の不正を撃つ~幻の戦前映画 ”何が彼女をそうさせたか”(1930年)

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戦前の ”傾向映画”

(左翼的思想、メッセージが込められたという意味合い)

の代表作で、封切り当時

商業的にも大成功した1本です。

 

しかし火災によるマスターフィルム消失で

その後数十年間は、その名前だけが知られており

1990年代になって

ロシアで奇跡的にフィルムが発見されるという

数奇な運命を辿りました。

 

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ある少女(14歳という設定、高津慶子)は孤児となり

親戚の家に身を寄せます。

 

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しかしサーカスに売られてしまいます。

 

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その後も職を転々とするのですが

生活は苦しいまま。

 

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サーカス時代に優しくしてくれた同僚の青年に再会、

二人で過ごす幸せなひと時もあったのですが

 

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未来への希望を持てない二人は

海岸で入水自殺を図り

高津だけが生き残ります。

 

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保護施設(教会)に送られた彼女は

信仰に救いを見出そうとします。

しかし、そこにも安住の地はありませんでした。

追い詰められた彼女が取った行動とは・・・

 

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脚本が練り込まれており、完成度の高い作品ですが

残念ながらオリジナル版の40%近くが失われており

ストーリーの主要なパートを観ることが出来ません。

(可能な限り、字幕で補正されています)

 

私の手許にあるのは

紀伊国屋書店のエディションで

製作当時のいきさつやフィルム発見~復元の過程を

詳細に綴ったリーフレットが付いています。

 

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1930年というと

今から100年近く前になりますので

遥か昔のようにも思えますが

既にこの頃には日本でも

多数の映画が製作されていて、

映画界は活況を呈していました。

 

今観ることの出来る作品はごく一部ですけれども

そのレベル、完成度の高さに驚くはずです。

この映画も

もし完全版が残っていたら、更に評価が高くなったでしょうね。

世界のどこかの倉庫の奥に

ひっそりと眠っていないでしょうかね・・・

 

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