バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

黒澤明&マイルス・デイビス 二大帝王の80年代のカムバックはどうだったのか

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黒澤明マイルス・デイビス

ジャンルは違いますが、それぞれの世界で

圧倒的な知名度の巨匠。

絶対的な存在として君臨しています。

 

二人は年齢こそ違え(黒澤が16歳年上)

1950年代から60年代にかけてが

キャリアの最盛期。

その後、健康上の問題などを抱えて

低迷の時期があり

80年代になってシーンの第一線にカムバックします。

 

今日は復帰後の両者について

当時の印象などを交えてつらつらと。

 

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まずはマイルス、

復帰第一作の”THE MAN WITH THE HORN”(1981年)

は大きな注目を集めました。

70年代のマイルスはライブ活動こそ精力的に続けていましたが

スタジオ録音でのオフィシャルリリースはそれほど多くはなかったので、

まさに話題沸騰。

通常ジャズの作品が総合チャートに登場することはほぼ無いのですが

このアルバムは50位くらいにチャートインしてましたね。

 

私も発売と同時にLP、買いましたよ。

ジャケットもお洒落でカッコ良かったんです。

 

AIDA

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感想は・・・

ウ~ン、微妙

もろ手を挙げて絶賛という感じではなかったですね。

(しかし今聴くと良さが分かりますね。マイルスの最高作ではないですが、カムバック以後のスタジオ録音盤としては本作が圧倒的に優れている)

 

復帰後のマイルスは1991年に亡くなるまでの10年間

快調なペースで新作を発表して、ワールドツアーも度々敢行しました。

この頃、私

レンタルレコード屋でバイトしてまして

マイルスの新作が出るとよく、店のなかで流してたんですね。

(珍しくジャズやラテンの品揃えも多かった店だったので)

 

マイケル・ジャクソンシンディ・ローパーの曲を取り上げたり

他にもロックミュージシャン(スティング、TOTOスクリッティ・ポリッティ

と共演等、華やかな話題も多かったんですけど

正直な感想を言ってしまうと、”中身” は

50~60年代のほうが

いっぱい詰まってたように思いますねえ、ウン。

 

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黒澤監督は60年代後半から

様々な事情で思ったような映画製作が出来なくなり

1971年には自宅の風呂場で

自殺未遂を図っています。

 

70年代の二作品 ”どですかでん” と ”デルス・ウザーラ”は

いってみれば「変化球」でしたので、大々的な宣伝も相まって

80年の ”影武者” に期待感が高まったんですよね。

「久しぶりに黒澤作品らしいスケールの大きな時代劇が観れるぞ!」と。

 

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出演者を一般人から公募したり

主役の交代劇などがあったりしたのですが

さて、完成した作品はというと

ウーン、これまた微妙・・・

 

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「異説・黒澤明文藝春秋

 

特に黒澤監督に近い、いわゆる身内~業界の諸氏からは

辛口を通り越したコメントが多かったように記憶しています。

(しかしこの後の作品と比較すると、晩年の数作のなかでは ”影武者” がベストではないかと思いますが)

 

こうして見ると

カムバック後のマイルスと黒澤には

奇妙なほどの共通点があるように思います。

 

*一般的には大きな話題を集めた(広告展開も大々的だった)

*しかし、かつてのファンや評論家筋、業界からの評価は必ずしも高くはなかった

*本人の創作意欲には陰りが無かった

 

音楽(曲作り、演奏)も映画(脚本書き、撮影)も

集中&持久力の勝負といった面があり

それにはやはり40~50代までがピークではないかな

という月並みな結論に落ち着いてしまうのですけれど・・・

 

しかし、だとしても

充分過ぎるほどのアーカイブ

まさに、LIFETIME SUPPLY を残してくれたわけですから

20世紀の二人の偉人に

あらためて最敬礼!

であります。

 

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