バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

活字を食べ続けた男~立花隆が逝く

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ちょっと前の報道ですけれど

ジャーナリストの立花隆が亡くなられたという。

 

熱心な読者ということではまったくなく、

そもそも手許に残っているのは2~3冊だけという

寂しい状況なんですが、一つの時代が終わった

という感を強く持ちました。

 

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文藝春秋 2017年2月号)

 

まず読書量が桁外れなんです、若い時分から。

古今東西の名作を読んで読んで、読みまくる。

しかし、「現実の世界で起きることのほうが遥かにスリリングで面白い」

ということで、以降

様々なジャンルのルポルタージュを精力的に発表していくことに。

 

ある分野の取材にとりかかる際には

関連した書籍を徹底的に読み込んでいくわけです。

「各分野の専門家と渡り合うためにはそれしかない」

 

数万冊に及ぶ蔵書が保存されている

通称 ”猫ビル” については

妹尾河童の ”河童のスケッチブック” でも紹介されていました。

 

取材対象は、政治の世界から宇宙空間まで様々な方向に向かいましたが

1980年代中頃からは

もっとも身近な宇宙~人間の脳や身体についての探求が

メインテーマになっていったようです。

 

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私が感銘を受けたのは

ノーベル賞受賞確実といわれた科学者

戸塚洋二との共編著

”がんと闘った科学者の記録”(文藝春秋社)です。

 

両者は以前から交流が深く

戸塚が病に倒れてからの

ロングインタビューが巻末に収録されています。

 

お互いに敬意を払い

時にユーモアを交えてのやり取りは

読者に多くの示唆を与えてくれます。

 

宗教と科学の共通点は?

宇宙の果てとは?

人間の死とは?

今、生があるということは?

 

知の巨人のお二人、

今頃は天国で美酒を片手に

壮大なスケールの会話を楽しんでおられることでしょう。

(立花は若い頃にバーを経営、戸塚は度数の強い酒を好んでいた)