これは大著です。
頁にして650超、
内容がまた極めてヘビー。
小説家島尾敏雄とその妻、ミホとの
激烈な愛憎の歴史を克明に追った
歴史上の人物や政治家、芸術家、芸能人などの
評伝は多数ありますけれど
これほど、対象の内面に迫った著作というのは
ちょっと思い当たりません。
(最相葉月の諸作品や植田紗加栄の「そして、風が走り抜けていった」くらいでしょうか)
極端に大雑把に例えてしまうと
この二人の関係性は
いわゆるソウルメイトの間柄。
どうにも切っても切れない
魂の繋がりなのですが
そこは男と女、
綺麗ごとばかりで済むわけはなく
実にドロドロとした展開がこれでもかと
続きます。
当のお二人も大変だったと思うのですが
お子さん(男の子と女の子が居た)も
さぞかし辛かったのでは・・・
という想いを禁じ得ません。
著者の梯久美子には
これまた優れた著書
がありますが、
島尾敏雄は戦争末期、
特攻兵器「震洋」の部隊長でした。
(駐屯地の奄美群島がミホとの出逢いの場所)
明日にも出撃~
それはイコール絶対的な死を意味するわけですが
ミホは敏雄が出航したら
自分も後を追おうと
短剣を携えて海岸に一人、正座してその時を待ちます。
しかし15日の終戦を迎えて出撃は中止。
二人は戦後、結婚式を挙げることが出来たのですが
不協和音は早いうちから
鳴り始めていたのでした。
関西に居を構えた敏雄が仲間とともに創刊したのが
同人誌の”VIKING”
その誌上に発表した作品が注目され、敏雄は本格的に作家の道を
歩むことになります。
"VIKING"には多くの優れた作家が集結しましたが
医師の久坂部羊もその一人。
現在に至るまで
医学知識を駆使した
多数の小説を発表しています。
現役医師でもある著者には実用書もあるのですが
そのなかに
冨士正晴が登場します。
(大の医者嫌いで無類の酒好き。散歩が身体にいいと聞くと、やめてしまう)
・・・こんなふうに、
なんらかの繋がりを軸にして
書籍の海をあちこち遊泳してみるのも
楽しいものです。
(音楽もそうですね。プロデューサー、アレンジャー、ミュージシャン繋がりで関連ディスクを追っていく)
難点は重度の睡眠不足になってしまうことでしょうか、
もう目が真っ赤です・・・