亡くなられてから30年近く経ちますが
今なお知名度が圧倒的であろう
作家の松本清張。
何より残された作品数が膨大で
かつ映画化、テレビドラマ化も
同一の作品で何度も行われたりしていますので
若い世代の方にも、比較的浸透しているのではないでしょうか。
私も子供の頃から、そこそこ読んでいましたが
(親の本棚に置いてあったやつを勝手に)
出来上がり具合にかなりの差があるような気がして
(生意気ですねえ)
正直、途中でギブアップということ多かったような。
お勧め、なんておこがましいですが
今でもふと読み返したりする7冊をご紹介。
”西郷札”
”或る「小倉日記」伝”
デビュー作 ”西郷札” をはじめとして初期に書かれた短編を集めたもの。清張は40歳を越えてから作家活動をスタートさせていますので、既に文章表現などは完成の域に達しています。長編に充分成り得る素材も多く、密度の濃さではピカイチですね。”或る~”は、映画版以外に松坂慶子・筒井道隆・国生さゆりのキャスティングでテレビドラマ(1993年)になっていますが、見応えありましたね。
”黒い画集”
文庫本で600ページ超(7編収録)とかなりのボリュームですが、清張の本ではこれが一番好みかな。もっとも脂がのっていたであろう時期(1950年代後半)の作品集で、映像化されたものが多いですね。
寒流 予告編
キャスティングがハマっています。
証言 予告編
近所の知り合いが殺人事件の容疑者に。自分が証言すれば救うことができる。
しかしそれでは浮気の事実が世間にばれてしまう・・・
”延命の負債”
1950年代から70年代にかけて幅広くセレクションされた短編集。いずれも20ページ前後のコンパクトさでサラリと読めます。入門編として最適。
”内海の輪”
清張は文壇デビューから数年間、「執筆量の限界を試す」ということで超人的なスケジュールをこなしていきますが、50年代後半に書痙(作家の職業病)が悪化。以降は口述筆記に加筆するという執筆スタイルに移行します。徐々に関心が小説以外のジャンルに移っていくのですが、この作品は67年発表の佳作。中尾彬と岩下志麻主演の映画も良かったですね。
”告訴せず”
今回の7冊のなかでは唯一の長編。ある男が選挙資金(裏金)を持ち逃げするのですが、不正な出所な故告訴される恐れは無い。計画はすべて上手くいくはずだったのだが・・・どうしても長編になってしまうとダレる場合が多くなりがちですが、この作品は上手くまとまっていて、クライムサスペンスものとしても面白く読めます。映画版は主役に青島幸男、江波杏子という異色キャストでしたね。
”神と野獣の日”
番外ということで。清張にとってはおそらく唯一のパニックSFもの。核ミサイルが5発も東京に向かってくるという設定です。この手の作品は幾らでもありますが、そのなかで際立っているかというとそれは別問題ですけれど・・・
松本清張の担当を務めた経験のある編集者の著作。
「書斎の清張」の日常が綴られていてます。
清張は自身、初期の短編が気に入っていたようですが
一読者として実に激しく頷いてしまいます。
選ぶ基準はいつ書かれたか。
50年代~60年代前半の作品群からチョイスすると
当たり!の確率が高いと思います。
なんて、偉そうなことをいうと
清張先生から怒られそうですが・・・