バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

シュルレアリスム? 実験映画? いやいやコメディでしょう、これは~”アンダルシアの犬”

 

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”アンダルシアの犬” (Un Chien Andalou)

 

映画について語られる際、間違いなく言及される

超定番作品(1929年)

 

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監督がルイス・ブニュエル

共同制作者にかのサルバドール・ダリ

 

20分ちょいの小品なんですが

女性がナイフで目を切りつけられるシーンが

あまりに有名。

その他にも謎めいた(思わせぶりな)シーンが続くので

シリアスなイメージで語られることが多いみたいですね。

 

なので、著名な映画評論家さん含めて

映画の解説がもう硬い、硬い。

心理学の専門用語を駆使したりとか。

あるいは逆に

”なんかもう全然分かりません、天才のやることは”

と匙投げパターン。

 

でも、これ

そんな作品じゃないと思いますよ。

ただの(いい意味で)喜劇映画ですよ。

笑ってもらおう&びっくりさせてやろう

というエンターテイメント性に溢れた。

 

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いきなり、こんな格好の自転車男

もう、喜劇宣言

してるじゃないですか。

 

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この連続ショットも

色々と分析されたりしてるようですが

 

蜜にむらがる蟻(自身&男全般)

女性の腋毛

砂地の(触ったら痛そうな)植物

 

とエロティックな願望をシンプルにイメージしてるだけでしょう。

で、蟻や腋毛は後半にも登場して

ちゃんとオチをつけてますし。

 

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頭のなかは女性(の肉体)でいっぱい

鼻血ブーの世界。

 

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もう、こうなったら力ずくで。

しかし勢いあまってズテーン・・・

 

このパートなんかは完全にキートンチャップリン

パロディー。

現場では爆笑しながら撮影してたと思いますよ。

 

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だって引っ張られてるの、ダリ本人ですよ(右側)

ブニュエルも冒頭場面に出てきますから

身内で盛り上がってる

ワイワイ映画ですって。

 

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男も女も内面には別の顔があるんだもんね

(本能と欲望に満ち満ちた)

それって隠そうと思っても

にじみ出てきちゃうんだよね、どうしようもなく

ということを言いたい映画でしょ。

 

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主演の女優さん

シモーヌ・マレイユ)

の動きや表情も全編、終始コミカルです。

身体つき(かなりふっくらしている)からしても

お笑い路線を狙っていたのは明らかかなと。

 

ただ、それだけでは芸がないので

アブストラクト&ショッキング(に見える)なカットを

入れ込んでるんですよね。

あと楽屋落ちのシーンとかも。

 

で、世間が騒然となって

ありとあらゆる解釈をし始めて

「まさに天才の為せる業だ!」

と持ち上げるのを

ブニュエルとダリはニヤニヤしながら

楽しんでたんじゃないかな。

 

インタビューとかでも

絶対演技してるはずですよ。

「映画というものの概念をだな、根本的に云々」

とか答えたりして。

 

で、ペロッて舌出してるはずです。

映画のなかでシモーヌ・マレイユがしていたように。 

 

とても楽しい

コメディ映画ですね

私にはそう思えます。