1953年のフランス映画
”恐怖の報酬”
イブ・モンタンが主演ですが
こちらはもう、映画史に残る傑作ということで
評価が定着しています。
舞台は南米奥地、訳ありの男たちが
ほんのちょっとの振動で爆発してしまう
ニトログリセリンをトラックで運搬するというお話です。
さてさて、それから四半世紀近くが経った後
リメイク版製作に乗り出したのが
当時、”フレンチ・コネクション” ”エクソシスト”
の特大ヒットを連発していた頃なので
大いに注目が集まりました。
こちらの主演はロイ・シュナイダー
”フレンチ・コネクション” でも好演していましたね。
オリジナル版と大きく違う点は
映画の前半部分。
53年度版では描かれなかった
南米に行くことに(逃れることに)なった男たちの
それぞれの前日譚について、世界各地でロケを行っています。
予算、かかってますねえ。
派手なアクション&大掛かりな爆発シーンなどを惜しげもなく披露、
観客を飽きさせないような配慮が感じられます。
映画の見せ所である
トラックの運搬シーンも
確かに迫力があるのですけれど・・・
観終わった感想としては
正直私は
ウーン、でしたね。
この作品の肝は、「速度が出せない」
ことなんですね。
普通、車両を使ったアクションというのは
100%、スピードが命です。
ところが、積んでる荷物が爆発物という設定なので
真逆~いかに慎重に運転していくかということが求められるわけです。
派手なカーチェイスなどはあり得ない。
フリードキンの畳みかけるスタイルには
ちょっと馴染まないかな、と感じてしまったんですね。
(だからこそ、前半のパートでそういうシーンを先出ししていたのでしょう)
あとね、サントラのメインがタンジェリン・ドリームという
当時人気のあったプログレ系バンドの演奏なんですが
どう考えてもB級ホラーにぴったりのチープなサウンド。
”フレンチ・コネクション” や ”エクソシスト”では
音楽のほうも完璧にハマっていたので
その点でも興が削がれちゃいましたね、私は。
興行成績も不振で(予算を掛け過ぎたということもあるのでしょうが)
超大赤字だったはずです。
後年のインタビューで、フリードキンは
「自分ではもっとも好きな作品だ」
ということを言っていますけれども。
印象に残っているのは
お約束のサービスカット。
”エクソシスト” を観た人なら
ニヤリと笑えます。
オリジナル版のほうは
酒場の女給の役で
ヴェラ・クルーゾーが花を添えています。
私生活では監督の奥さんでもあった人ですね。
撮影当時、40歳前後だと思うのですが
スラリとした容姿の美女。
(フリードキン版では、ここも弱い)
思うに、決してこの映画
スリルやサスペンスを味わう類では無いのではないかと。
(そう言われてますが)
それよりも
この世の果てのような僻地の閉塞感や気怠さ、
その地に閉じ込められた男たちの焦燥感が
作品の魅力かなと。
オリジナル版でも
トラック輸送の場面ではないところに
非凡なカットがあるように思います。
そうそう、両作品とも
結末はバッド・エンドです。
バッドの中身は違いますけれども。
恐怖の報酬は得たけれども
報いもまた受ける、ということなのでしょうね。