バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

それぞれの小説作法~極端と限界の分水嶺

さて今回は

”強烈な” 描写に満ち満ちた

小説群を幾つか。

 

お食事前の方はどうぞ

ご遠慮くださいませ・・・

 

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(デブを捨てに/平山夢明 文藝春秋

 

いきなりインパクトのあるタイトル

&ドアーズの ”まぼろしの世界” のジャケットを

どことなく連想させる装丁からし

尋常ではない予感がしますが

そうです、収録されている4編は

まったくもって普通のお話ではありません。

 

表題作は、ヤクザに追い詰められている男と

”並外れて体重の多い” 女の道行。

金を工面するために、女は大食いの店に寄って

賞金付きのチャレンジメニューに挑むのですが、

結果、盛大に「戻して」しまいます。

ボロボロの二人は果たして、生き抜くことが出来るのか・・・

 

バイオレンスな場面もあるのですが

平山作品としては

中級レベルの強烈度でしょうか。

もっと刺激を!という向きには

”独白するユニバーサル横メルカトル”(光文社)

など、いかがでしょうか。

 

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さて、吐く

というアクション(妙な言い方ですが)

にスポットを当てた

こちらはSFのジャンルから。

 

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(ぼくの、マシン/大森望 編   創元SF文庫)

 

2000~2009年に発表された作品集ですが、

嘔吐した宇宙飛行士/田中啓文

は、設定がこれまた凄い。

 

宇宙空間で訓練中の飛行士、前日のピザの食べ過ぎで

我慢しきれず、宇宙服のなかで嘔吐。

母船とも離れ、吐しゃ物にまみれたまま

一人宇宙空間を漂流する様子が

これでもかと克明に描写されています。

 

空腹に耐えかねた飛行士は、やむを得ず

一度体外に排出したものを・・・

 

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(虫/江戸川乱歩 創元推理文庫「D坂の殺人事件」に収録)

 

時代を遡って、1929年発表の

江戸川乱歩の短編。

 

乱歩の作品では、あまり取り上げられることはありませんが

これはかなりのヘビー級かと。

なんといっても、息絶えた(つまり死体ですね)

女性を愛し続ける男の話ですから。

時間の経過とともに、当然おぞましい状況になるわけですが

その辺りも書き込みが細かく為されています。

 

オムニバスの1編として映画にもなっているようですが、私は未見です。

そのまま映像化ということは出来ないでしょうから

かなりアレンジされているのかな・・・

 

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文庫本では、この作品の次に

”石榴” というタイトルの小編が収められているのですが

(こちらはグロテスク系ではありません)

飴村行の小説に、同名の短編がありまして・・・

 

飴村行、ですからね。

予想通りに普通ではありません。

それでも収められた作品のなかでは

”穏やかな” ほうなのですが。

 

ご興味のある方は、もとい

あくまでご興味のある方のみ

是非にどうぞ。

 

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(石榴/飴村行 角川ホラー文庫「粘膜戦士」に収録)