バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

中味もタイトルも全部変えちゃえ! あるSF映画の変遷記

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1961年の ”火を噴く惑星”

ロシア(ではなくて旧ソ連ですね)製作のB級SF映画

金星に知的生命が存在するかどうかを探る

宇宙飛行士の冒険ストーリーです。

 

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恐竜や人喰い植物、海中の遺跡都市など

(せこいところはありますが)

盛りだくさんのエンタメ作品。

なかでもメカの造形には凝っていて、

 

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人間を助けるチームの一員、ロボットのジョン

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水陸両用車

 

後年のスターウォーズなどのSF大作にも

影響を与えているという説もあるようです。

 

さて、ジョン君は映画の終盤で

飛行士たちを救うために

自らが犠牲となります。

 

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肝心かなめの金星人については

エンディングのカットに

ほんのちらりと(水面に)映るだけ。

これはこれで、なかなか上手い処理ではあります。

 

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さて、この映画は後に

アメリカの配給会社に権利を買い取られて

米国内のテレビ映画として放映するために

改変作業が行われます。

 

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タイトルバックもロシア語から英語へ。

 

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飛行士チームも

アメリカ人のグループが追加されたり、

 

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唯一の女性メンバーも

アメリカ人の俳優さんに差し替えになっています。

これが1965年のこと。

 

更に3年後には

後に、”ラストショー” や” ペーパームーン” を撮る

ピーター・ボグダノヴィッチ

またまた内容変更。

今回は劇場公開用なのですが、

 

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な、なんだ!

途中からいきなり

露出度の高い女性軍団が登場。

これが金星人(原始人)の正体だったのです・・・

 

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金星人はオリジナル版に登場していたロボット、

ジョン君の残骸を発見。

 

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以降はジョン君を崇め奉って

生きて行くことにしたのでした。

 

なんという超強引さでしょう。

当然、これらのシーンは後撮りのため

宇宙飛行士たちと金星人が一緒に映る場面は

一つもありません。

 

外国の映画を変更(上映時間を短くしたり特定のエピソードをカット)

するというのは、別に珍しいことではないのですが

これだけいじくりまわしてしまうと

もはや別モノですね。

 

ところで美女金星人のシーンを観ていて

ふと思ったことがありまして。

 

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こちら、レッド・ツェッペリンの第5作

”聖なる館” (1973年)のジャケット。

 

成人と少女の違いはありますけれど

海岸の風景含めて、重なる部分が多いような気がしちゃって。

 

デザインを担当したのはあのヒプノシスで、

インスピレーションを受けたのは

アーサー・C・クラークの著作から

ということになっているのですが。

 

もしかしたらチラリとでも

この映画のことが頭をかすめたのかも、

なんてね。

 

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