名匠、清水宏監督の1936年作品なんですが
これは見方によっては、相当にアバンギャルドな一篇であります。
1時間ちょいの小品なんですが
なんとそのうちの半分は人の移動を映しているんですね。
という設定になっていて
カメラは彼等と擦れ違う人々を追っていきます。
筋らしい筋はほとんどなく
ドラマ性はありません。
ともかく
人が歩く、走る、振り返るといったシーンの連続です。
この作品に限らず、同時期の監督作品
”有りがたうさん” ”按摩と女” ”簪” ”団栗と椎の実”
などにも必ず登場する
まさに「清水」印のこだわりカットです。
清水監督は役者による
いかにもの芝居~作為的なものを徹底的に嫌っていましたので
人間のごく自然な動作(徒歩、駆け足)に
フォーカスしていたのでしょうね。
もっとも製作会社の経営陣には
戸惑いもあったかもですね。
「お客さんから文句が来ないだろうか」的な。
この作品に出演している笠智衆は、自著のなかで
「清水作品はもっと評価されるべきだ」
との文章を残しています。
この映画を観て
感動した!
盛り上がった!
泣いた!
という人はまず居ないでしょう。
でも
「おっと、やってるねえ。ウームやってるやってる」’
とニヤリ、出来ますよ。
それもまた映画の魅力、醍醐味ですよね。
ご興味のある方が居らしたら、是非に
本編のほうをどうぞ。