数ある日本映画のなかでもトップ・オブ・トップの存在で、
ベスト〇〇などのランキングものには
必ず上位にリストアップされています。
森の妹とその夫(水戸光子、小沢栄)
戦乱の世、近江の国に住む二組の夫婦。
男たちは窯で焼いた陶器を売りさばくことで
一儲けを狙っています。
二人の妻はそんな夫の姿に
一抹の不安を感じているのですが・・・
市場へ向かう途中で、離れ離れに。
兄は美しい女(京マチ子)に出逢い、誘われるままに屋敷へ。
夢のような時間を過ごすのですが
どうも女の様子がおかしい。
実は女や使いの者たちは、この世のものではなかったのです・・・
一方、儲けた金を元手に
侍になって出世をするという夢をかなえた弟は
行方が分からなくなっていた妻に再会。
妻は遊女に身を落としていました。
弟は、浮ついた欲望を捨てて故郷に帰ることを決意します。
その頃、夢から覚めた兄も家に帰りつき、
そこでは妻が暖かく帰りを待ってくれていたのですが・・・
ストーリーがはっきりしていますし
二組の夫婦を置いたことで、話に広がりが出ています。
上映時間も約一時間半(96分)とほど良い長さですね。
田中、京、水戸と三大女優が持ち味を存分に発揮していて
そのバランスも絶妙です。
撮影当時、監督と田中絹代は私生活でもつき合いがあって
(結婚間近かと言われていた)
監督/役者の間柄を超えた充実感が
画面から伝わってきます。
個人的には溝口作品では
異常なまでにテンションマックスの ”西鶴一代女”
無駄なシーンがゼロ、名人芸の ”近松物語”
により惹かれるですが
エンターテイメント性を適度に兼ね備えた本作が
国内外から高い評価を受けるのは
至極、頷けるところでもありますね。
夢幻に惑わされ、そして救われるのが森&田中
現世に踊らされ、苦しんだ末に絆を取り戻す小沢&水戸
この並列描写が、冴えに冴えているのが見どころですよ!