夕焼け空に巨大な唇が浮かんでいます。
小林正樹監督の ”怪談”(1964年)
小泉八雲の著作をベースとした4話構成のオムニバス作品。
黒髪
雪女
耳無芳一の話
茶碗の中
中村翫右衛門、杉村春子、滝沢修、佐藤慶、宮口誠二、奈良岡朋子
という豪華な顔ぶれ。
大規模なセット撮影による極彩色全開の、
万華鏡ワールドが180分間にわたって展開されます。
(今度は眼が・・・)
海外では高い評価を得たのですが、あまりに製作費がかさみ過ぎ
小林監督は自宅を売り払って返済に奔走することになります。
出演者の一人である仲代達矢の著作によると、
「私も京都へ行く飛行機代や宿代は自分で出しました。ほとんどの役者がノーギャラで、スタッフもノーギャラで」
「私も四百万円ほど出しました。そしたら、小林さんが亡くなった時(中略)、奥さんが亡くなった直後に持ってこられました。もちろん私は受け取りませんでしたが」
第三話の、壇ノ浦の合戦シーンなどは
黒澤監督もびっくりの壮大スケール。
ストーリー的に面白いのは最終話の ”茶碗の中”
名優たちのセリフ回し、動き、それを捉えるカメラワークに
ひたすら酔いしれるばかり。
年代的には日本映画の絶頂期最後の頃ですが
現在ではあまりスポットが当てられることがないのは残念。
(小林監督の作品全般についても同様ですね)
前半の二話がやや地味ですので、
機会がありましたら後半の二話だけでも
是非にご覧くださいまし・・・
怪談 予告編