”THE BIRDS~鳥”
数あるヒッチコック監督作品でも
一二を争うポピュラー具合かな?
映画に興味なし、という方でも
おそらく一度は観たことがあるのではないでしょうか。
動物パニック映画の元祖、といった捉え方も出来ますよね。
まずオープニングの掴みが上手いんですよね。
サンフランシスコ市内、既に上空には鳥の群れが(尋常では無い多さ)
ティッピ・ヘドレンはペットショップ(鳥専門ではない)に
入りますが、籠の中の鳥たちはあくまで人間にとって
安全な存在です。
俯瞰シーン(野生の鳥が人間を見る視線になっています)
先陣を切ってラブバードのつがいが登場。
ヘドレンの運転にあわせて、身体が傾きます。
この辺りまでは軽快なムードですね。
ヘドレンはシスコ郊外の美しい湖畔の町にやってきて
ラブバードをペットショップで知り合ったロッド・テイラーの家へ
届けるのですが・・・
この湖のシーンは目立ちませんが
非常にテクニカルなショットで構成されていて、
ラブバードを持ち運んでいる時には
何も起きないんですね。
しかしヘドレンが一人でボートを漕いでいると
いきなり一羽の攻撃(警告、の意味合いですね)を受けます。
鳥の種類はカモメ(この映画の主役)ですね。
室内の暖炉からはいきなり雀の大群が。
おっとっと、ヘドレン
笑ってしまっています。
「まだやるの?こんなものでいいかしら?」
まあ、合成シーンなのでご愛敬ですね。
ヒッチが編集段階で気付かないわけがないので
意図的に残したんでしょうね。
今度はカラスです。
ジャングルジムが埋め尽くされていくシーンは名場面ですね。
というわけで、鳥たちにちゃんと独立した見せ場を
作ってあげてるわけですね、監督は。
ただ滅多やたらに映しているわけではないと。
扱いが人間の役者さんたちと同等かそれ以上です。
湖畔のレストラン~駐車場の爆発炎上シーンは
スケールも大きくて、最大の見せ場になっています。
電話ボックスに閉じ込めらたヘドレンをしつこく撮り続けている
お馴染み ”サディスティック・ヒッチ・タッチ” も堪能?できますね。
この作品、実は人間ドラマのほうはかなりドロドロで
のちのデイヴィッド・リンチの ”ツインピークス”
みたいな危うさ&怪しさが漂ってますが
そちらのほうの描写はちょっと中途半端というか
消化不良気味でしょうか。
(鳥さんチームにかなりの持ち時間取られてますから、仕方が無いのですけれど)
よそ者(侵入者)に対する地元住人の嫌悪感や拒絶感
~鳥が人間を襲うことに繋がっている
も、ヘドレンやお客が閉じ込められるレストランでの
やり取りに象徴されているわけですけれども。
最終シーンでは鳥さんチームは
カラスとカモメが揃って登場。
この段階でヘドレンは一連の出来事のショックに耐えられず
精神のバランスを崩してしまっています。
ここにも作者(87分署シリーズで知られるエド・マクベイン)と監督の
メッセージが込められてますね。
”人間と鳥を置き換えて考えてみたら?”
という。
脱出シーンですが、テイラーの手許には
冒頭部分で登場するラブバードが。
(鳥たちは襲ってきません)
ちょうど2時間の上映時間ですが
あと30分ほど長くしたならば
人間ドラマのパートもより丹念に浮かび上がらせることが
可能だったはずです。
しかしそれでは飽きられてしまう(観客に)
嫌がられてしまう(製作会社に)
可能性が高いので、この辺りが落ち着きどころかなと。
まあ、脇役(この映画では人間)は主役(鳥さん連合)を
より光らせるために居るわけなので
ひとまず一件落着ということで。
予告編