バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

「鳥のキャスティング」が技あり!お馴染みヒッチコックの ”鳥” (1963)

f:id:bkkmind:20211123103654j:plain

 

”THE BIRDS~鳥”

 

数あるヒッチコック監督作品でも

一二を争うポピュラー具合かな?

映画に興味なし、という方でも

おそらく一度は観たことがあるのではないでしょうか。

 

動物パニック映画の元祖、といった捉え方も出来ますよね。

 

f:id:bkkmind:20211123104216j:plain

 

まずオープニングの掴みが上手いんですよね。

サンフランシスコ市内、既に上空には鳥の群れが(尋常では無い多さ)

ティッピ・ヘドレンはペットショップ(鳥専門ではない)に

入りますが、籠の中の鳥たちはあくまで人間にとって

安全な存在です。

 

f:id:bkkmind:20211123104700j:plain

 

俯瞰シーン(野生の鳥が人間を見る視線になっています)

 

f:id:bkkmind:20211123104834j:plain

 

先陣を切ってラブバードのつがいが登場。

ヘドレンの運転にあわせて、身体が傾きます。

この辺りまでは軽快なムードですね。

 

f:id:bkkmind:20211123105030j:plain

 

ヘドレンはシスコ郊外の美しい湖畔の町にやってきて

ラブバードをペットショップで知り合ったロッド・テイラーの家へ

届けるのですが・・・

 

この湖のシーンは目立ちませんが

非常にテクニカルなショットで構成されていて、

ラブバードを持ち運んでいる時には

何も起きないんですね。

 

しかしヘドレンが一人でボートを漕いでいると

 

f:id:bkkmind:20211123105450j:plain

 

いきなり一羽の攻撃(警告、の意味合いですね)を受けます。

鳥の種類はカモメ(この映画の主役)ですね。

 

f:id:bkkmind:20211123105830j:plain

 

室内の暖炉からはいきなり雀の大群が。

 

f:id:bkkmind:20211123105925j:plain

 

おっとっと、ヘドレン

笑ってしまっています。

「まだやるの?こんなものでいいかしら?」

まあ、合成シーンなのでご愛敬ですね。

ヒッチが編集段階で気付かないわけがないので

意図的に残したんでしょうね。

 

f:id:bkkmind:20211123110223j:plain

 

今度はカラスです。

ジャングルジムが埋め尽くされていくシーンは名場面ですね。

 

というわけで、鳥たちにちゃんと独立した見せ場を

作ってあげてるわけですね、監督は。

ただ滅多やたらに映しているわけではないと。

扱いが人間の役者さんたちと同等かそれ以上です。

 

f:id:bkkmind:20211123110604j:plain

f:id:bkkmind:20211123110632j:plain

 

湖畔のレストラン~駐車場の爆発炎上シーンは

スケールも大きくて、最大の見せ場になっています。

電話ボックスに閉じ込めらたヘドレンをしつこく撮り続けている

お馴染み ”サディスティック・ヒッチ・タッチ” も堪能?できますね。

 

この作品、実は人間ドラマのほうはかなりドロドロで

のちのデイヴィッド・リンチの ”ツインピークス

みたいな危うさ&怪しさが漂ってますが

そちらのほうの描写はちょっと中途半端というか

消化不良気味でしょうか。

(鳥さんチームにかなりの持ち時間取られてますから、仕方が無いのですけれど)

 

よそ者(侵入者)に対する地元住人の嫌悪感や拒絶感

~鳥が人間を襲うことに繋がっている

も、ヘドレンやお客が閉じ込められるレストランでの

やり取りに象徴されているわけですけれども。

 

f:id:bkkmind:20211123111059j:plain

 

最終シーンでは鳥さんチームは

カラスとカモメが揃って登場。

 

この段階でヘドレンは一連の出来事のショックに耐えられず

精神のバランスを崩してしまっています。

ここにも作者(87分署シリーズで知られるエド・マクベイン)と監督の

メッセージが込められてますね。

”人間と鳥を置き換えて考えてみたら?”

という。

 

f:id:bkkmind:20211123112059j:plain

 

脱出シーンですが、テイラーの手許には

冒頭部分で登場するラブバードが。

(鳥たちは襲ってきません)

 

ちょうど2時間の上映時間ですが

あと30分ほど長くしたならば

人間ドラマのパートもより丹念に浮かび上がらせることが

可能だったはずです。

 

しかしそれでは飽きられてしまう(観客に)

嫌がられてしまう(製作会社に)

可能性が高いので、この辺りが落ち着きどころかなと。

 

まあ、脇役(この映画では人間)は主役(鳥さん連合)を

より光らせるために居るわけなので

ひとまず一件落着ということで。

 

予告編

www.youtube.com