”ジャッカルの日”
1971年の出版。
映画版は1973年の製作で
監督はフレッド・ジンネマン
主役にエドワード・フォックス。
文庫本で500ページ強、
映画のほうも2時間22分と重量級の内容です。
ちょっと両者を比べていきましょうか。
イギリス出身のフォックス、反フランス政府組織の幹部から
ドゴール首相の暗殺を依頼されます。
フォックスは高額の報酬と引き換えに、着々と暗殺計画を練っていきます。
自分と似ている人物のパスポートを空港で盗むシーンですが
フォックス、それほど背丈は高くないように見えます。
むしろ欧米人としては小柄な部類ではないでしょうか。
(原作では180センチとなっています)
対する警察側は
ベテランのマイケル・ロンズデールと若手のデレク・ジャコビ
による二人組。
原作ではこの二人が登場するのがかなり遅く(ほぼ半分過ぎ)
また、フランス政府や警察組織のメンバーの固有名詞が多数
登場しますので、(特に外国人にとっては)
映画版のほうが理解しやすいような気がします。
半面、個々の登場人物のバックグラウンドが
小説ではしっかり描写されていますので
(なぜ反政府活動に身を投じようとしたのかなど)
作品の深みに浸るには、やはり活字の世界のほうが勝っています。
フォックスは様々な交通機関を用い
&巧みな変装術でフランス入国を試みます。
対する警察の二人組も懸命にフォックスを追跡するのですが
あと一歩のところで取り逃がしてしまいます。
この小説はフランス以外にもヨーロッパ各国が舞台となっているのですが
そのスケール感を表すには映像は向いていますね。
文字だけですと(実際に行ったことがなければ)
頭の中で想像するしかありませんから。
ただ映画ではフランス政府の役人も英語で話しています。
考えようによっては非常におかしい話ですよね。
非英語圏をメインの舞台にした場合にどうしても
起きてしまう現象ですが。
その点、翻訳本でしたら
作品中に登場するのが何語であろうが
全部日本語で統一されているので、却って不自然な感じが無いともいえます。
読者が勝手に、「ああ、ここはイタリア語で会話してるんだろうな」
などとイメージすればいいわけですから。
遂にドゴールが公衆の面前に姿を現す
パレードの日を迎えてしまいます。
焦りを隠せないロンズデール。
(ちなみに小説では短躯となっていますが、ロンズデールはかなり上背があります)
年老いた傷痍軍人に化けたフォックスは
厳重な警戒網を突破し、ドゴールを狙撃するのに
最適な位置のアパートの一室に侵入することに成功。
さて、果たしてドゴールの運命や如何に・・・
この作品は原作の小説も、そして映画も
どちらも非常に良いんですね。
だいたい映画化されるとですね、(先に原作を読んでいると)
ガッカリすることが多いわけです。
読書中に、頭の中で”理想の映像化”を
してしまってますから。
エドワード・フォックスもマイケル・ロンズデールも
小説版とイメージは違うんですけれども
素晴らしい演技の連発。
読んでから観ても、観てから読んでも
一粒で二度美味しい
極上のエンターテイメントワールドに浸れること請け合いです。
The Day Of The Jackal a scene from custom-made rifle test
一つだけリクエストを。
日本語の訳(もう50年くらい前ですので)と
表紙をそろそろ変えてみてはいかがでしょうか・・・