1969年~1995年の長きにわたって製作された
”男はつらいよ”
全48作で描かれた世界は、まさに昭和の時代そのもの。
(後半は平成にかかっていましたが)
ある程度の年齢の方ならば
年2回上映される度に映画館に足を運んだという人も少なくないでしょう。
それこそ時代の風物詩といえるほど、
寅さん映画は日常の生活に根付いていたと言えます。
寅次郎純情詩集(第18作 マドンナ/京マチ子)
もちろん主演は渥美清。
当然、代表作ということになるわけですが
生前の渥美清を良く知る人たちからは
こんな声も聞こえてきます。
”僕なんかから見ると、そういう渥美さんの斬り込んでくる捨て身の技に狂気が走っているんですね。<中略> それが、「男はつらいよ」の寅さんだと、やはり受け身の芝居になってくるんですね。<中略> 寅さんでは、何か彼の一番凄みのある斬り込みの芸というのが見られないですね” 小沢昭一
”主役になったら今度は周りをたてなきゃいけない。だから、「男はつらいよ」も、凄いのは初めの五本くらいですよ。<中略>アウトロー的存在であるテキ屋の影が薄くなって、寅が天使みたいないい人になっちゃうんです。 小林信彦
”最初のほうの寅さんの映画の、渥美さんの演技ってすごかったでしょ。じつは、あれは台本がそうなってるのね。寅さんにかかわる話が四つか五つぐらいあって、だから渥美さんも寅さんのいろんな面をだすことができる。でもいまは話が二つぐらいしかなくて、それもとってつけたような話だから、寅さんまでとってつけたような人になっちゃう。 吉田日出子
渥美清という稀代の俳優が持つポテンシャルが
必ずしも十分に生かされていないのではないか?
という指摘ですね。
私はシリーズを全作観ているわけではないし
熱烈なファン(沢山居られることでしょう)でもないので
偉そうなことは言えないのですけれど、
確かに初期の数本のテンションに比べると
後期になればなるほど、正直な感想としては
色々な意味で「観るのが厳しく」なってしまったり
ズレを感じるシーンを多く見つけてしまいます。
渥美清の体力的な問題(若いうちに結核により片肺を切除している)や
病気の発覚(肝臓機能低下の進行)に加えて、興行的な問題も絡んでいたことが
今では様々な著作等で明らかにされていますけれど。
続・男はつらいよ
初期の数作では、声の張りがやはり素晴らしいですね。
弟分の登(津阪 匡章)が若い!
では ”凄かった渥美清” に触れるにはどうしたらいいのでしょう?
渥美清は寅さんシリーズの人気が上昇した以降は、
その他の映画やテレビ出演については極めて限定的で
それも顔見せ程度の作品が多いのですね。
そこではあくまで「軽い芝居」で「軽い笑い」を
振りまいているだけです。
寅さん以前では
”続・拝啓天皇陛下様(1964年)~脚本に山田洋次のクレジットあり
あたりの評価が高いでしょうか。
”本当に誰もかなわない”(小沢昭一)
渥美清を知るには
タイムマシーンに乗って
1950年代の浅草のストリップ小屋を
覗きにいくのが一番なんでしょうね。
誰か、貸してくれませんかねえ・・・
参考/引用図書