バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

引き伸ばされたのはネガではなくて、儚い夢 ”欲望”(1966年)

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言わずと知れたミケランジェロ・アントニオーニの有名作品。

特に映画好きの方でなくとも観た方が多いのではないかと。

宣伝素材もカッコいいしね。

 

そして感想はですね、おそらく(間違いなく)

「なんじゃこれ・・・よく分からん」

だと思うんですよ。

褒めるとしたら、当時のロンドンの風俗~グルービー・ロンドン

がよく描かれているとか、カメラワークのセンスがいいとか。

肝心のストーリー展開については、鑑賞していて

なるほど~納得となる人は

それほど居ないでしょう。

 

これね、私も遥か昔に観て

やはりイマイチ理解できなかったんです。

で、観返す機会があって

あー、そういうことなのね

と(勝手な思い込み解釈かもですが)合点がいきました。

 

マニアの方や映画評論家の解釈とは全然違うかもしれませんが・・・

 

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映画の冒頭、主人公のデヴィッド・ヘミングス

工場勤務を終えて、車に乗り込みます。

 

2台停車していて、どちらの車に乗ったのが

ちょっとよく分かりませんが

 

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いずれにしても以降のシーンに頻繁に登場する車とは

明らかに違うように見えるんですね。

(幌付きなんですが、最初の画像で奥のほうの車だとしても色が違いますし、デヴィッドは駐車の際に幌は下ろしたままです)

 

ここからファッションカメラマンとしての華やかな日常

&公園での殺人事件が描かれていくわけですが、

それらは全て、現実に起きたことではなく

デヴィッドの夢の世界なのではないかと。

 

だから不条理、不自然な場面が多くて当たり前なんですよ。

夢の中の話ですから。

(無線電話のやり取りとかヤードバーズ演奏での観客の様子とか、どこか変でしょ)

 

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夢のなかのデヴィッドはモテまくりなわけです。

そういったシーンは全てカラフルな色調。

しかしその夢のなかにも現実が忍び込んでくるわけですね。

 

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その際にはカラーでなくてモノクロ(白黒)の描写になります。

 

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フィルムも白黒ですよね。

(冒頭の車に乗るシーン、手前の風景は黒一色。車の奥~進行方向の街並みはそうではありません)

 

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で、夢ならいつかは醒めるわけです。

このプラカードにもそのメッセージが。

 

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夢の中に迷い込んでいるデヴィッドを優しく諭す

サラ・マイルスのような存在もあります。

 

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よく知られている ”エアー・テニス ”のシーンですが

デヴィッド、若者グループから離れて

ポツンと一人ですね。

(服が上下、白黒)

 

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とても寂しそうに見えます。

 

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グループのメンバー

顔が白塗りですよね。

”もう時間切れですよ。この世界からお引き取り下さい”

と言ってるんですね。

 

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デヴィッドはここで、初めて見えないボールを追って

視線を左右に動かします。

(さようなら、一夜の夢・・・)

そして、消えていくわけですね。

色とりどりの夢世界からモノクロの現実に戻っていくんです。

 

というのがマイ・勝手解釈。

 

このアメリカ西海岸版にあたるのが

リンチの ”マルホランド・ドライブ

なんじゃないかと。

構成とテイストが共通しているように思うんですね。

 

以上、あくまでごく私的な感想ということで・・・

 

Blowup      Trailer

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