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イドウダイスキ~伊藤大輔監督のあまりの傑作時代劇三本

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ちょっとこちらをご覧くだされ。

 

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映画検定キネマ旬報映画総合研究所編/キネマ旬報社

 

1927年度の日本映画のベスト10

伊藤大輔という名前の監督作品が3本ランクインしています。

 

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「日本映画ぼくの300本」双葉十三郎著/文藝春秋

 

1927年から1931年の5年間で見ても

6作品の名が挙げられています。(いずれも時代劇)

一世紀前に高評価だった日本映画って

どんな感じなんでしょうね。

 

忠治旅日記

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”忠治旅日記”

 

全部で三部作なのですが、現存しているフィルムは

ほぼラストの三作目のみ。

主演は大河内伝次郎ですが、身体の調子を崩しているという設定で

最期は完全に寝たきり状態になっています。

ですので、表情の変化や僅かな手の動きのみの

演技を強いられているわけですが、もう絶品です。

共演の伏見直江にも見せ場が用意されていて、これまた最高。

(この時代ですと女優さんは脇役~色添え程度の扱いが多いので、その意味でも貴重)

 

斬人斬馬剣

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”斬人斬馬剣”

 

この作品はごく一部(二十数分)しか映像が残っていないのですが

それを観ただけでも尋常ではないテンションの高さです。

武士階級の圧政に対する怒りが込められた

いわゆる傾向映画なのですが、

 

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主演の月形龍之介が仲間を集めて、一揆を試みるのですが

(後の黒澤監督の ”七人の侍” がこのパターンを踏襲していますね)

字幕の差し込みがアートの領域、サイレント映画の真骨頂ですね。

 

また移動撮影が多く使われており(そのことから、イドウダイスキと呼ばれた)

乗馬や戦闘シーンなど実にダイナミックです。

 

御誂次郎吉格子(おあつらえじろきちこうし)

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”御誂次郎吉格子”

 

お馴染みの鼠小僧に扮するのが大河内、

伏見直江伏見信子(実の姉妹)の共演で

ここでも次郎吉にどこまでも惚れぬく

直江の好演が光ります。

(ほぼ全編が残っているので、ストーリーを追っかけやすい)

 

伊藤監督は戦前に、他にも多くの作品を残しているのですが

それらのほとんどはフィルムが完全に消失しているか

断片程度しか残されていないようです。

 

ズタズタ状態の映像を観られるというのは

監督にとって非常に不本意だと思うのですが

感想を言わせて貰えば、ただただ一言

素晴らしすぎると。

 

私はそれほど時代劇好き人間ではありませんし

(実際、それほど観ていない)

知識も無いのですが、

そういうレベルの人間が唸るのだから

これはもう間違いなしのマスターピースであります。

 

未見の方は機会がありましたら、是非にご高覧のほど!

 

長恨(13分のみ現存フィルム)

www.youtube.com