戦前に数多くの傑作時代劇を撮った
伊藤大輔監督の1951年度作品。
太平洋戦争終戦後、僅か6年後の製作ですが、
阪東妻三郎、市川歌右衛門、月形龍之介、山田五十鈴、高峰三枝子
河原崎権十郎、花柳小菊、三島雅夫、進藤英太郎、高橋貞二・・・
と華やかなラインアップ。
いわゆるオールスター競演の記念興行ですね。
セットも豪華に組まれていて、潤沢な予算があったことが窺えます。
嫌味な役柄をやらせたら天下一品の三島雅夫
ここでも性格の悪い侍を活き活きと演じています。
劇中劇が組み込まれていたり
いちまーい、にまーい
の番町皿屋敷がモチーフで使われていたりと
脚本にも一工夫が。
(高名な脚本家三人による合作です)
よれよれの大久保彦左衛門(山本礼三郎)
お茶目な場面が所々に散りばめてあって、
脱力系の笑いを誘います。
(おお近藤か! うむ、こんどは俺の番だといったダジャレあり)
将軍家からの高価な頂き物の皿を
”変な絵柄ね~”とおおっぴらに言ってしまう
非常識なお姫様。
な、なんだこいつ
と呆れ顔の市川、三島。
残念ながら、後半部分は
変に真面目&堅苦しい展開になってしまい
やや肩透かしというかアンバランス気味。
また肝心の阪妻は、主役でありながら
引っ込んだ立ち位置になっていて
あまり目立ちません。
(最後になってやっと、市川との対決シーンがあります)
山田、高峰も特に必然性の無い配役で
両者の個性が生かされているとは言い難し。
傑作、とは言えないかもしれませんが
戦後間もないこの時期に
これだけのスケール感のある作品を製作できたことは
ある意味驚きです。
132分とかなり長めではあるのですが
時代劇好きの方でしたら
どうぞ一度は。
(没個性の女将さん役で、ちょっと見せどころが無い山田五十鈴)