今回は、女が男を殺す映画を2本。
どちらも名監督
アンリ=ジョルジュ・クルーゾーが手掛けた逸品です。
1955年の ”悪魔のような女” は
シモーヌ・シニョレとヴェラ・クルーゾー(監督の奥さん)
の二人が、ヴェラの夫を風呂場で溺死させて
死体をトランクに詰め、二人の勤務先である学校に運び
プールに投げ込みます。
ところがプールの水を抜いても死体が見当たらず
(生きている)夫を見たという生徒も現れて、
二人は当惑します。
特に心臓に疾患を抱えているヴェラの精神は限界を迎え、
床に臥せることに。
ある晩、夫が生前使っていたタイプライターを叩く音が
書斎から聞こえてきます。
そこでヴェラが見たものは・・・
ヒッチコックがお好きな方なら
間違いなく楽しめる展開ですね。
(結末はツイスト~どんでん返しになっています)
続いては1960年の ”真実”
主演はかのブリジット・バルドー。
どちらかというと、軽いエンタメ~お気楽調の作品が多い
彼女の出演作のなかでは極めてヘビー&ダークな異色作。
映画は法廷場面からスタート。
ブリジットは殺人事件の容疑者です。
ブリジットには音楽家志望の彼氏(サミー・フレー)
が居たのですが、かなりの堅物。
言い争いになることも少なくありません。
若くて美しい彼女は男からチヤホヤされるのが楽しく
平気で浮気をしてしまいます。
サミーの心は徐々に離れていき、二人の仲はいつしか疎遠に。
やがてサミーは新進の有望指揮者として
テレビに出演するまでに。
有名になった彼のアパートを久方ぶりに訪ねたブリジット。
サミーは欲望を遂げた後に、冷たい言葉を投げかけます。
「お前のことなんか、これっぽっちも愛していない。お前はそれに値しない女だ。今すぐ出ていけ」
ブリジットの手には拳銃が・・・
法廷では
かつての遊び仲間たちや実の妹(サミーと婚約)の証言によって、
ブリジットの私生活がなにもかも露わにされていきます。
お前は尻軽女なんだ・・・
こちらもラストは衝撃的な展開なのですが
法廷でのブリジットの演技はまさに一世一代、
渾身の名演です。
もっともっと評価されて、然るべきだと思いますね。
ちなみに ”悪魔のような女” で、殺されてしまう夫役だった
ポール・ムーリスが
嫌味な検事役で、出演しています。
(こちらでは、ずっと生きているのでセリフ多し)
またヴェラ・クルーゾーは画面には登場しませんが
脚本執筆者の一人としてクレジットされていますね。
そしてなんと、ヴェラはこの年に心臓発作で亡くなってしまいます。
一説によると、夫とブリジット・バルドーが撮影中に深い関係に
なってしまったことを苦にしての自殺とも言われているようです。
真相は分かりませんが、映画の世界が
現実に浸食してくるという
それこそ恐怖そのものですね・・・
ご覧になる時は
二作続けて是非に。
Diabolique Trailer
La Vérité Trailer