同名の日本映画やテレビドラマが幾つかありますが
こちらは1955年に製作されたアメリカ映画。
それほど有名な作品ではありませんが、観応えありますよ。
まずオープニングで鋏が大写しに。
役者やスタッフの名前が記された紙を切っていきます。
印象に残るカットですが、こちらは後のストーリーの伏線になっています。
ニューヨークの病院に
一人の中年男が運び込まれてきます。
薬を飲んでの自殺未遂、どうやら一命はとりとめそうです。
傍らには心配そうな妻の姿が。
その後体調が回復してきた男、
妻と一緒に帰宅することを断固拒否。
妻が席を外すと、困惑する医師達に
自分が自殺をするに至った経過を語り始めます。
男はかつて、売れっ子の舞台演出家でした。
主役に抜擢したのが今の妻。
二人は愛し合うようになり結婚、
最初のうちは幸せな時間を過ごしたのですが
妻は流産(その後も子供を産めないことを医師に告げられる)
夫は優しい言葉をかけるのですが
その後二人の関係はトラブル続きに。
夫の仕事は下降線、新作の舞台は不評オンパレードとなるのですが
妻は新聞の切り抜き(例え悪評であっても)に情熱を傾けるようになります。
オープニングのはさみのシーンがここで生きてますね。
その他、夫にかかってくる電話に勝手に対応したり
夫が苛立つ行為を次々と。
しかし本人は変わらず夫を愛しています。
「すべて、あなたのためにやっているのよ」
帰宅を拒否し続け、精神科の病棟に入院している夫を訪ねに来た妻。
帰り際に医師から呼び止められます。
「もう夫を連れて帰っていいですよね。今日は調子が良さそうでしたし」
「いえ、そうしたらご主人はまた具合が悪くなるでしょう。奥さんはご主人が問題を抱えているとお考えですよね。その原因があなたにあると考えたことはありますか?あなたはご主人を独占しようとしているし、嫉妬の感情も持っている。ご自分の行動で、旦那さんが破滅していくことを実は認識しているのでは?」
「なにを言うんですか!私は夫をずっと愛し続けているのです。すべて夫のために、夫に良かれと思って、それだけを願って生きているのですよ!」
「奥さん・・・よろしければ精神科の治療をお受けになりませんか、あなたも」
夫の退院の日、
ぎこちない二人。
妻が切り出します。
「アパートの鍵を渡すわ。部屋も掃除してあるから綺麗よ。どうぞあなた一人で帰ってください」
(かつて愛し合っていた時と同じ構図ですね)
夫は妻をじっと見つめて、語り掛けます。
「君だけの問題じゃないんだ。僕だけのでも。これは二人の~僕たちの問題なんだよ。一緒に帰って、一緒に考えてみよう」
二人は静々と家路に着きます。
ここでジ・エンド。
(大袈裟に抱き合ったりしないのがいいですね。万事全て解決というわけではないので、安直なハッピーエンドにしなかったのは正解)
主演兼監督がホセ・ファーラー
妻役にジューン・アリソン
芸達者の二人の会話の応酬が圧倒的です。
今の視点からしますと、病院側の対応や描写などについて
かなり?の部分もあるかもしれませんが
当時の映画でこれだけ、男女(夫婦)のプライベートな部分に
焦点を当てた作品は珍しいように思います。
”カッコーの巣の上で” (1975年)という有名作ありますよね。
その先駆的作品といえる側面もあるかなと。
ポップコーンを美味しく頬張れる内容ではありませんが、
濃く淹れたコーヒーをお供にご覧くださいまし。