バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

やはり、貴方は凄かった・・・”バスター・キートン物語”(1957年)

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”The Buster Keaton Story”

 

かの喜劇王バスター・キートンの半生を

これまた名優のドナルド・オコーナーが演じる

伝記映画です。(監督/シドニー・シェルダン

 

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製作時にはバスター本人も健在で

(ほとんど引退状態でしたが)

アドバイザーとしてクレジットされています。

 

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往年の名場面が、芸達者のドナルドによって

再現されているのが見どころ。

私生活のロマンス&トラブルについての描写も多く、

人間ドラマとして観ることも出来ますね。

 

The Buster Keaton Story   Scene Comparisons

www.youtube.com

 

それにしても、思い起こされるのが

キートンの残した作品の凄み。

単に体を張っているというレベルではなく

まさに一歩間違えば命を落としてしまう危険度です。

 

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今の、というか他の役者さんなら

絶対に自分ではやらない(&やらせられない)でしょう。

キートンの凄いところは、単に演じているだけでなく

全てのアイデア出しに加え、監督も自ら行っていること。

神技以外のなにものでもありません。

 

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そういう天才性は、チャップリンと共通していますね。

 

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(若き日のキートンチャップリンの2ショット)

 

しかし、サイレントからトーキーの時代に移行すると

キートンの人気は薄れていきます。

無表情~ポーカーフェイスがトレードマークだったキートンにとって、

セリフを喋ることによって笑わせるというのは

本質的に向いていませんから・・・

 

次第に脇役に回されることが多くなり、

私生活ではアルコールが手放せなくなります。

若干のリバイバルブームなどもあったのですが

その晩年は決して、華やかなものではありませんでした。

 

キートンは1966年2月に世を去りますが、

その数か月前に発表された ”The Railrodder”

という短編映画があります。

 

カナダ製作で僅か25分の短さ(監督/ジェラルド・ポッタートン)

そこには全盛期とは比ぶべくもない

キートンの姿が映し出されています。

 

The Railrodder

www.youtube.com

 

しかし、これは素敵なんですよ。

老醜を晒すという、

そしてそれを観てしまうという

無残さはありません。

 

全てを胸の内にしまった

穏やかな表情のキートンがそこに居ますから。

 

この作品にはセリフが一つもありません。

サイレント映画

なんですね。

余計なダジャレを言わなくていいわけです、キートンは。

そして相変わらず、身体を張っています。

かなり危ない場面を自らがこなしています。

 

バスター、あなたは真に偉大な

コメディアンでした。

 

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