”The Buster Keaton Story”
これまた名優のドナルド・オコーナーが演じる
伝記映画です。(監督/シドニー・シェルダン)
製作時にはバスター本人も健在で
(ほとんど引退状態でしたが)
アドバイザーとしてクレジットされています。
往年の名場面が、芸達者のドナルドによって
再現されているのが見どころ。
私生活のロマンス&トラブルについての描写も多く、
人間ドラマとして観ることも出来ますね。
The Buster Keaton Story Scene Comparisons
それにしても、思い起こされるのが
キートンの残した作品の凄み。
単に体を張っているというレベルではなく
まさに一歩間違えば命を落としてしまう危険度です。
今の、というか他の役者さんなら
絶対に自分ではやらない(&やらせられない)でしょう。
キートンの凄いところは、単に演じているだけでなく
全てのアイデア出しに加え、監督も自ら行っていること。
神技以外のなにものでもありません。
そういう天才性は、チャップリンと共通していますね。
しかし、サイレントからトーキーの時代に移行すると
キートンの人気は薄れていきます。
無表情~ポーカーフェイスがトレードマークだったキートンにとって、
セリフを喋ることによって笑わせるというのは
本質的に向いていませんから・・・
次第に脇役に回されることが多くなり、
私生活ではアルコールが手放せなくなります。
若干のリバイバルブームなどもあったのですが
その晩年は決して、華やかなものではありませんでした。
キートンは1966年2月に世を去りますが、
その数か月前に発表された ”The Railrodder”
という短編映画があります。
カナダ製作で僅か25分の短さ(監督/ジェラルド・ポッタートン)
そこには全盛期とは比ぶべくもない
老キートンの姿が映し出されています。
The Railrodder
しかし、これは素敵なんですよ。
老醜を晒すという、
そしてそれを観てしまうという
無残さはありません。
全てを胸の内にしまった
穏やかな表情のキートンがそこに居ますから。
この作品にはセリフが一つもありません。
なんですね。
余計なダジャレを言わなくていいわけです、キートンは。
そして相変わらず、身体を張っています。
かなり危ない場面を自らがこなしています。
バスター、あなたは真に偉大な
コメディアンでした。