バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

ストレンジなミックスフライ~黒沢清の ”蜘蛛の瞳”(1998年)

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黒沢清監督の後期オリジナルビデオ作品。

同時期製作の ”蛇の道” はVシネテイストの範疇でしたけれど、

これはちょっと風変わりというか、ある意味

調理の下ごしらえに凝った、盛り合わせ定食のような映画ですね。

 

哀川翔と中村久美の夫婦

数年前に娘を惨殺されるという辛い過去があるのですが

互いを思いやる日々を送っています。

 

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復讐心に燃える哀川は犯人(寺島進)の所在を突き止め

監禁拉致、暴力の限りを尽くしたうえ

命を奪います。

 

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その後、高校時代の同級生(ダンカン)と遭遇

貿易関係の仕事を手伝って欲しいと声をかけられ

それに応じます。

 

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しかしその実態は裏稼業、しかも殺人行為でした。

 

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哀川はやがて、躊躇することなく

人の命を奪う人格に変容していきます。

 

友人であれ女性であれ、狙った相手へ向けられる銃口に迷いはありません。

 

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かつては哀川を信頼していた妻にとって

今の夫は別人です。

二人で食事中に耐え切れなくなって、嘔吐してしまう妻。

しかし哀川は構わず、箸を進めます。

 

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ストーリーからすると非常にハードな印象を受けるのですが

オフビート的なシーンが挟み込まれていたり

ユーモラスな場面も多数。

 

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役者の顔ぶれが重なっていることもあり、

北野映画を思わせたりもしますね。

 

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組織の幹部役の大杉漣が怪演です。

 

またホラータッチでもあり(娘の幽霊が出てくる)

一口に形容できない&一癖も二癖もある

黒沢テイストが満載。

 

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(殺されたはずの寺島進が映画の終盤、車椅子で哀川の前を通り過ぎていく)

 

評価の高い前年の ”CURE” に比べると地味な存在ですが

ソナチネ” やタランティーノ作品、昔のヌーヴェル・ヴァーグ

好きな方なら是非に。

 

蜘蛛の瞳  予告編

www.youtube.com