バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

愛称ベルさん、山田五十鈴の圧倒的演技力を観よ

 

先日、黒澤明監督の ”蜘蛛巣城”(1957年)を

観返していて、改めて作品の完成度に唸らせられました。

 

私は決して黒澤監督の大ファンというわけではなく、

代表作としてよく名が挙がる諸作についても

手放しで満点!ということは少ないのですが

シェークスピアの ”マクベス ”を原作にしたこの映画は

その完成度において、圧倒的な出来栄えかと。

 

なかでも浅茅を演じる山田五十鈴の存在感が凄まじく、

どちらかというと男=主、女=従の位置付けが多い

黒沢作品のなかでも異彩を放っています。

 

"折鶴お千”

 

山田五十鈴のスクリーンデビューは早く、

10代で既にかなりの出演作があります。

溝口健二監督の ”折鶴お千”(1935年)撮影時には

18歳ですが、早くも「只者ではない」感に溢れていますね。

 

”折鶴お千”

 

”折鶴お千”

 

同じく溝口監督による ”浪華悲歌” ”祇園の姉妹” (いずれも1936年)は

日本映画史に残る傑作という評価が定着しています。

(山田はこの時点で一児の母)

 

 ”祇園の姉妹” 

 

”浪華悲歌”

 

モダンな洋装も似合いますね。

 

 

戦後も次々と話題作に出演を続け、

 

 ”現代人”

 

1952年の ”現代人”(渋谷実監督)では

バッサリと髪をショートにして

男を手玉に取るバーのマダムを熱演。

 


”流れる”

 

田中絹代高峰秀子杉村春子岡田茉莉子、栗島すみ子、中北千枝子

といった錚々たる顔ぶれでの演技合戦が見ものの

”流れる”(成瀬巳喜男監督/1956年)

 

”東京暮色”

 

自身が出演した作品に対して

厳しい評価を下すことの多い山田本人が

「いい映画でしょ。あれは一生忘れられませんね」

と、後のインタビュー(君美わしく/川本三郎著に収録)で答えた

小津安二郎監督の ”東京暮色”(1957年)

 

など枚挙にいとまがありません。

 

蜘蛛巣城

 

蜘蛛巣城

 

そして、それらの頂点に位置するのが

蜘蛛巣城” での鬼気迫るパフォーマンス。

このテンションの高さは他の女優さんでは太刀打ちできない

ワン&オンリーの世界ですね。

 

山田は後に映画界とは距離を置き、舞台での活動が主となります。

おそらくは、これ以上の(自分の力が発揮できる)役柄には巡り合えないだろう

という判断があったのではないでしょうか。

 

未見の方は是非、本編をご覧ください。

そして他の山田五十鈴出演作も是非に。

 

蜘蛛巣城  予告編

www.youtube.com