観返していて、改めて作品の完成度に唸らせられました。
私は決して黒澤監督の大ファンというわけではなく、
代表作としてよく名が挙がる諸作についても
手放しで満点!ということは少ないのですが
その完成度において、圧倒的な出来栄えかと。
なかでも浅茅を演じる山田五十鈴の存在感が凄まじく、
どちらかというと男=主、女=従の位置付けが多い
黒沢作品のなかでも異彩を放っています。
"折鶴お千”
山田五十鈴のスクリーンデビューは早く、
10代で既にかなりの出演作があります。
溝口健二監督の ”折鶴お千”(1935年)撮影時には
18歳ですが、早くも「只者ではない」感に溢れていますね。
”折鶴お千”
”折鶴お千”
同じく溝口監督による ”浪華悲歌” ”祇園の姉妹” (いずれも1936年)は
日本映画史に残る傑作という評価が定着しています。
(山田はこの時点で一児の母)
”祇園の姉妹”
”浪華悲歌”
モダンな洋装も似合いますね。
戦後も次々と話題作に出演を続け、
”現代人”
1952年の ”現代人”(渋谷実監督)では
バッサリと髪をショートにして
男を手玉に取るバーのマダムを熱演。
”流れる”
田中絹代、高峰秀子、杉村春子、岡田茉莉子、栗島すみ子、中北千枝子
といった錚々たる顔ぶれでの演技合戦が見ものの
”流れる”(成瀬巳喜男監督/1956年)
”東京暮色”
自身が出演した作品に対して
厳しい評価を下すことの多い山田本人が
「いい映画でしょ。あれは一生忘れられませんね」
と、後のインタビュー(君美わしく/川本三郎著に収録)で答えた
小津安二郎監督の ”東京暮色”(1957年)
など枚挙にいとまがありません。
”蜘蛛巣城”
”蜘蛛巣城”
そして、それらの頂点に位置するのが
”蜘蛛巣城” での鬼気迫るパフォーマンス。
このテンションの高さは他の女優さんでは太刀打ちできない
ワン&オンリーの世界ですね。
山田は後に映画界とは距離を置き、舞台での活動が主となります。
おそらくは、これ以上の(自分の力が発揮できる)役柄には巡り合えないだろう
という判断があったのではないでしょうか。
未見の方は是非、本編をご覧ください。
そして他の山田五十鈴出演作も是非に。
蜘蛛巣城 予告編