バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

セリフなんか要らない~映画の神が瞳に宿った "BROKEN BLOSSOMS"

 

D・W・グリフィスの ”散り行く花”(1919年)

国民的どころか、

地球人映画と言っていいほどの

記念碑的作品ですが、今日はひとつのシークエンスだけを

ちょっと細かく観ていきましょう。

 

 

ロンドンの下町で

アンティーク(雑貨)屋の店番をしている

リチャード・バーセルメス

昼日中からアヘンで朦朧としています。

 

 

店先に一人の少女(リリアン・ギッシュ)が。

ウインドウの商品をじっと見つめています。

 

 

共に暮らしている父親から

連日虐待を受けている少女、

人形を買う余裕はありません。

例え買っても、取り上げられてしまうだけでしょう。

そしてまた殴られる・・・

 

 

少女は寂しい気持ちでウインドウを離れます。

(この間、店の奥に座っているバーセルメスとは視線が合いません)

 

 

道の向かい側で

一人の男が

ギッシュの動きをじっと追っています。

 

 

なにやら良からぬ企みがあるようです。

 

 

ギッシュは通りを渡るのですが

道端の男はサッと背を向けて

顔を見られないようにします。

 

 

なんとなくギッシュのことが気になっていた

バーセルメスも外へ。

(この時点でも三者の視線は交差していません)

 

 

買い物をするギッシュ

 

 

背後から

男が様子を伺っています。

 

 

遠慮がちにギッシュを見ていたバーセルメスと

ここで初めて

一瞬だけ視線が合います。

 

 

その時ギッシュは

背後に人の気配を感じ

後ろを振り返ります。

 

 

男は即座に眼を逸らします。

 

・・・

 

全体で4分ほどのシークエンスですが

なんと素晴らしいショットの連続でしょう。

何十回観ても飽きませんね~

 

 

映画の創始期において既に頂点

 

グリフィスの想像力と

それに応えるギッシュのパフォーマンスに

ただただ圧倒されるばかりです。

 

先頃亡くなったジャン・リュック・ゴダール

「自分たちが作ろうとしている映画は結局、グリフィスから一歩も出ていない」

と言わしめたマスターピース

是非に本編をご高覧あれ!

 

a scene from "Broken Blossoms"

www.youtube.com