バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

日本とフランス メラメラ燃える二つの ”鬼火”

 

1956年、千葉泰樹監督の46分の小品。

ちょうど、一時間テレビドラマの正味の長さですね。

 

加東大介扮するガス料金の集金人

何カ月も支払いが溜まっている家へ取り立てに向かいます。

 

 

そこには生気のない一人の女(津島恵子)が。

「病気の夫が奥で臥せっております。粥を作るためにどうしてもガスが必要なのです。後生ですからもう少し待って頂けませんか」

 

 

「もし金がどうしても出来ないのなら、別の方法で払ってくれてもいいんだぜ。お前さんも子供じゃないんだから分かるよな?今夜、俺の部屋へ来ないか」

 

下卑た笑いを浮かべる加東。

 

 

銭湯で身綺麗にして、上寿司を出前で頼み

津島の訪問を待ちます。

 

 

深夜、津島はやってきたのですが

怯えた顔つきで会話が弾みません。

辛抱しきれなくなった加東が、布団を敷き始めると

恐ろしさのあまり、津島は部屋を飛び出します。

 

 

寝たきりの夫(宮口精二)に

「心配しないで。あなたが想像しているようなことは無かったのよ」

と語り掛けますが、夫は

「俺たちは、不幸だな・・・」

と寂しく呟くばかり。

津島の心に絶望感が広がっていきます。

 

 

翌日、すっかり気分を害した加東は

「今日は滞納分を全額払わせてやる。もう容赦はしないぜ」

と津島の家へ向かうのですが

そこで恐ろしい光景を見ることになるのです・・・

 

 

こちらはルイ・マル監督の ”鬼火~Le Feu follet ” 

(英タイトルは The Fire Within)

非常に評価の高い作品ですね。

エリック・サティの楽曲が効果的に使われています。

 

 

主人公の青年(モーリス・ロネ)は

アルコール依存症という設定なのですが、

その症状を描くことがメインになっている

酒とバラの日々” や ”失われた週末”

といった作品とは異なるテイスト。

ドラマチックな出来事が起きるというわけではなく

ひたすら虚無感全開の108分間です。

 

日本の ”鬼火” とは全く動機が違うのですが、

津島とモーリスの最終的な選択は同一です。

 

明るい映画を観たくない時に

二本立てでどうぞ。

どんよりしますよ・・・

 

Le Feu follet (1963)   Trailer

www.youtube.com

 

参考図書

「友よ 映画よ」山田宏一著/ちくま文庫

「外国映画ぼくの500本」双葉十三郎著/文春新書

「ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200」小林信彦著/文春文庫