バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

ウェットにならない、ウェルメイドな戦前喜劇映画 ”奥様に知らすべからず”

 

1937年(昭和12年)のコメディ映画です。

非常に軽いタッチで、

お涙頂戴的なシーンがまったく出てきません。

洋画を観ているような気持ちになりますが

原作がアメリカの小説なんですね。

(映画の脚本も色々と手掛けているリチャード・コーネル作)

 

辛気臭い話はどうも苦手だな~

という向きには気に入ってもらえる

愛すべき佳作ですね。

 

 

二組の家庭が描かれていますが

どちらの夫も異常に恐妻家で

奥さんから始終、文句の言われっ放し。

ただただ耐えて耐えて、耐えまくります。

(許してもらえない時は奥さんに敬語で返事)

 

 

奥さんが家に居ると

「あっ、僕が居ちゃあ邪魔だよね。失敬するよ」

水槽の観賞魚に餌をやりながら

「君だけが僕の気持ちを分かってくれるんだ」

などなど、セリフもユーモラスです。

 

 

二人とも家ではストレスが溜まるばかりで

奥さんに嘘をついては、外で女性を口説こうとするのですが

始終帰宅時間を気にしているので

愛想を尽かされてしまいます。

(遅く家へ帰ると門が閉まっていたり、厳しく追及されて寝させてもらえない)

 

ひたすらおろおろする夫役の

斎藤達雄と坂本武

ビシバシ夫にクレームを言い続ける

岡本文子と吉川満子

四者の絡み合いが最高です。

 

 

出番は少しですが

笠智衆がなんと、ボクサー役で登場。

小津映画のお父さん役からは想像も出来ないような

演技をしています。

 

日本映画名作全史 戦前編/猪俣勝人著(教養文庫

 

監督はこれがデビュー作の渋谷実

後に ”てんやわんや” ”自由学校” ”本日休診” ”現代人”

などの話題作を次々と発表していくわけですが

その才能の片鱗が既に十分、発揮されています。

 

上映時間はちょうど一時間

ダレることなく楽しめますよ。

(ラスト、オチもちゃんとついています)