これはねえ、観る人を選ぶ映画ですね。
いや別にね、難解なセリフが飛び交うわけでもないし
歴史や宗教についての深い知識も求められていません。
登場人物も少ないです。
時間もそんなに長くないし(83分間)
ではなんで難しいかというと
「なんにも起きない」のですよ。
ずっと。
通常の映画にあるような起承転結が無いんですね。
一軒家(平屋、庭が広い)に
二人の女性(ルチア・ボゼー/ジャンヌ・モロー)と
二人の子供が暮らしています。
(男も一人居るようですが、冒頭にチラリと映るだけ)
モローはボゼーの友人。
女の子二人のうち、一人はボゼーの娘で
もう一人は姉妹ということでなく
クラスメートのようです。
ある種の共同生活ですね。
この4人の室内や庭園での
行動が描かれているのですが
口数は極めて少なく、感情の起伏も
表情に現れてきません。
(しかし対立構造ではなく、調和は保たれているようです)
動きの少ない落ち着いた(沈んだ)映像ですが
極めて技巧的なショットの連続です。
画面の奥(隅)で、ボゼーやモローの歩く姿が
再三登場します。
ボゼーと娘は外界(外の通り/学校など)に対して
かなり強固な拒絶反応がある点で共通しており、
おそらくはモローとクラスメートが
外の世界との架け橋に位置付けられているのでしょう。
映画の後半で
セールスマン~訪問販売員が屋敷を訪れて
商品を買わせようとします。
この「部外者」に対するボゼーとモローの演技が秀逸で、
拒絶でも歓待でもない
~奇妙な動物を見るような視線が印象的です。
二人の女の対応があまりに素っ気ないので
セールスマンは気まずさを感じるばかりなのですが、
これは異種の動物が鉢合わせをして
相手には危険性が無いことを確認した後に
無関心になる~それ以上の興味を持たない様子を
ボゼーとモローに演じさせているように思うのですが
どうでしょう?
監督は鬼才(といえば良いのか?)
初監督作品ですが、60歳近いデビューですね。
なにが言いたいのか、明確には分かりません。
(少なくとも私には)
しかし、観てしまうんですね。
最後まで・・・
A Scene From "Nathalie Granger" (1972)