これは傑作ですよ。
ランキングもの(日本映画ベスト100とか200とか)に
入っているのを見たことありませんが。
もう構図がビシバシの決まりまくり。
撮影は鈴木博(戦前のこれまた傑作 ”阿部一族”や、成瀬巳喜男監督のマスターピース ”おかあさん” を撮っているベテラン)なんですが、
戸口や襖、障子、窓越しの奥行きのあるカット割りが圧巻。
これぞ映像の快感!
画面に出入りする人物の配置も名人芸ですね。
移動撮影も多用されていますが
戦前の清水作品に見られるような
才気走った独創性といったものではなく
落ち着きが感じられる仕上がりです。
若き日の自作へのオマージュカットがまた素晴らしく。
”ありがたうさん”
”按摩と女”
主演の大河内傳次郎の朴訥としたボケ芝居に加えて
(滑舌が悪くモゴモゴしているのですが、それが妙に可笑しい)
妻役の風見章子をはじめ、
あと脚本(セリフ)がこれまた良いんですよ。
コメディ色が濃いのですが
適度にウェットな場面も挟み込んであって
全体のバランスが絶妙です。
(いい加減な大河内に愛想を尽かしつつ、それでも離れられない風見の心情を足元の動き~行ったり来たりで表している秀逸なカット)
そして、エンドタイトルがこれです。
「終」とか「完」でなく
「始」
もう、言うことなしの (お茶目な)逸品であります。
機会がありましたら本編を是非に。
(目出度い婚礼の席なのに、コーヒーとお菓子だけの食膳にゲンナリする招待客)