バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

天才、清水宏監督の隠れた戦後の傑作 ”小原庄助さん” (1949年)

 

これは傑作ですよ。

ランキングもの(日本映画ベスト100とか200とか)に

入っているのを見たことありませんが。

 

 

もう構図がビシバシの決まりまくり。

撮影は鈴木博(戦前のこれまた傑作 ”阿部一族”や、成瀬巳喜男監督のマスターピース ”おかあさん” を撮っているベテラン)なんですが、

戸口や襖、障子、窓越しの奥行きのあるカット割りが圧巻。

 

 

これぞ映像の快感!

画面に出入りする人物の配置も名人芸ですね。

 

 

移動撮影も多用されていますが

戦前の清水作品に見られるような

才気走った独創性といったものではなく

落ち着きが感じられる仕上がりです。

 

若き日の自作へのオマージュカットがまた素晴らしく。

 

”ありがたうさん”

 

”按摩と女”

 

主演の大河内傳次郎の朴訥としたボケ芝居に加えて

(滑舌が悪くモゴモゴしているのですが、それが妙に可笑しい)

妻役の風見章子をはじめ、

飯田蝶子田中春男日守新一の芸達者ぶりも堪能出来ます。

 

あと脚本(セリフ)がこれまた良いんですよ。

コメディ色が濃いのですが

適度にウェットな場面も挟み込んであって

全体のバランスが絶妙です。

 

(いい加減な大河内に愛想を尽かしつつ、それでも離れられない風見の心情を足元の動き~行ったり来たりで表している秀逸なカット)

 

そして、エンドタイトルがこれです。

 

 

「終」とか「完」でなく

「始」

 

もう、言うことなしの (お茶目な)逸品であります。

機会がありましたら本編を是非に。

 

(目出度い婚礼の席なのに、コーヒーとお菓子だけの食膳にゲンナリする招待客)