バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

1970ミュンヘン、1987ベルリン ヴィム・ヴェンダースのグレイスカイ

 

ヴィム・ヴェンダース

ベルリン・天使の詩

1987年の公開ですが、

日本でも大きな話題になりました。

 

 

全編ベルリンロケですが

カメラ撮影があまりに見事。

 

 

もうお見事としか

言いようがありません。

 

 

個人的に好きなのが

図書館のシークエンス。

天使達は、図書館がきっと好きなんでしょうね。

 

 

惜しむらくは

もうちょい、尺を詰めてもよかったかなと。

2時間以上あるんですが、100分程度にしていたら

よりスッキリしたのではないかと。

 

 

遡ること17年前、

ヴェンダースの長編処女作の

”サマー・イン・ザ・シティ”

 

あちこちに既に「ヴェンダース印」の特徴が

見て取れますね。

 

 

こちらはミュンヘンの刑務所を出所した男の

逃避行(昔の仲間から付きまとわれる)です。

若き日のヴェンダースもチラリと登場。

 

完成度からいったら、勿論

ベルリン・天使の詩” のほうが

遥かに上なんですけれど

この作品には惹かれるものがありますね。

 

それは音楽。

この処女作には

キンクスラヴィン・スプーンフルのナンバーが

使われてるんですね。

(そもそもタイトルの ”サマー・イン・ザ・シティ” って、ラブィン・スプーンフルのヒット曲から付けてるんですよ。だからこの映画の邦題の ”都市の夏” なんてのは✖ですね)

 

これらのナンバーのほうが、”ベルリン・天使の都” に

フィーチャーされているバンド(楽曲)

よりも好みなので・・・

 

サントラの好き嫌いで

映画を評価するなんてことも

たまにはあって良いのかな、と。

 

The Kinks    Days (1968)

www.youtube.com

 

Lovin' Spoonful    Summer In The City (1966)

www.youtube.com

 

岸田森、大作戦

 

大スター、というわけではないけれど

素敵な役者さんて居ますよね。

 

男優ならば

天本英世神山繁小池朝雄三島雅夫、信欣三

といった面々がすぐ思い浮かびます。

味のある&洒落た演技を見せてくれるに違いない

という期待感を抱かせてくれる。

 

 

なかでも筆頭は

岸田森

でしょうか。

 

岡本喜八監督作品や

怪奇ホラー系(吸血鬼)

萩原健一松田優作との絡みが愉快な

テレビドラマなどなど。

 

私的に一番印象に残っているのは

怪奇大作戦” ですね、なんといっても。

 

 

配役表では一番目ではないのですが

実質、主役ですしね。

脚本もよく練られていますし

凝ったアングルも多いですよね。

 

 

この重い内容のドラマが

夜の7時台に流されていたというのが凄いですが。

(”ウルトラセブン”の後続番組)

子供ではまず理解出来ないですよね・・・

 

 

帰ってきたウルトラマン” にも

(途中まで)準レギュラーで出ていましたね。

妹役が榊原るみ

 

後年には東京12CH~テレビ東京

”もんもんドラエティ”

というバラエティー番組にも

ドラキュラ役で登場していました。

手塚治虫の ”ドン・ドラキュラ” に似ているタッチがあったような。そういえば息子さんの手塚眞も出演していましたね)

 

時代劇の出演作も多いですし、

ネイチャー系のドキュメント(蝶の収集マニア)も

ありました。

 

こういうの全部まとめて

DVDボックスにしてくれませんかねえ。

何十、何百巻になるか分かりませんけれど・・・

 

 

参考図書

しどろもどろ(岡本喜八著/ちくま文庫

ウルトラマンのできるまで(実相寺昭雄著/筑摩書房

ウルトラマンが泣いている(円谷英明著/講談社現代新書

ウルトラセブン研究読本(洋泉社

不死鳥 岸田森ワイズ出版

こいつは真のカルト映画だ~マックス・ローチの演奏全開 ”黒い太陽”

 

蔵原惟繕監督の1964年作品。

 

これはきてますね。

傑作、かどうかはともかく

怪作であることは間違いないかなと。

 

まず音楽がマックス・ローチなんですね。

で、既存の音源でなく

この映画のためのオリジナル演奏。

(曲そのものは黛敏郎

 

当時ローチの奥さんだった

アビー・リンカーンのボーカルも聴けるし、

サックス、ピアノ、ベースも

寄せ集めとかでなく

レギュラーメンバー

 

"Black Sun" OST   Max Roach feat. Abbey Lincoln

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映像のアクセントという位置付けでなく

全編に音が被さっています。

(但し、マックス・ローチディスコグラフィーにはカウントされていない)

 

 

主役は川地民夫

大のジャズマニアで

飼い犬の名前がモンク(セロニアス・モンクから)

 

 

そこに殺人を犯してしまって逃亡中の

アメリカ人兵士(チコ・ローラント)が飛び込んできて・・・

というお話。

 

 

チコはまったく日本語が通じず、

川地は英語が出来ません。

ぶつかり合いながらも

川地はチコの逃亡~アメリカに帰りたい

に手を貸していくことになります。

 

 

当時渋谷に実在した

荒れ果てた教会内でのロケが

効果的に活かされています。

 

 

チャーリー・ミンガスの名作

”道化師” のジャケットが映し出された後に

 

 

(警察の目をごまかすために)

顔を白塗りにしたチコが登場。

一方、川地は黒塗りしています。

演出がキマッってますね。

 

 

チコ・ローラント(ローランドの表記もあり)は

韓国での従軍経験の後、

日本で数多くの映画、テレビ、CMでの出演作を残しています。

 

本作では出番が圧倒的に多く、

まさに一世一代の大熱演なのですが

残念ながらあまり演技力のある人ではないので

ちょっとそこは厳しいかな、という気はしますね。

(トランペットを吹くシーンがあるのですが、”ちゃんと”吹いてますね。演奏経験があるのでしょう)

 

チコ・ローラントが出てくるテレビCM

www.youtube.com

 

 

チコを助けるために

ラスト、川地は圧倒的多数の警官隊と

銃撃戦に。

(まったく弾を充填していないのに、なぜ撃ち続けれるのかというツッコミは無し)

 

 

日本映画名作100とかには

絶対出てきませんね、この手の作品は。

 

私はマイフェイバリット100の

ひとつですけれども・・・

 

Scene From "Black Sun"

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ひたすらスタイリッシュなブラジル映画 ”良心なき世代”

 

これはもう、ただただカッコイイ

そういう映画であります。

 

 

一応話の筋はあるんですが

そんなことはどうでもよく

一時間半、映像美に酔いしれるのが最上の鑑賞法ですね。

 

 

ブラジルのジャンヌ・モロー

ノルマ・ベンゲル

無人のリオのビーチで

フルヌード大奮闘。

(かなり長いシークエンスです)

 

 

主人公の若い男役(ヘセ・バラダオ、ダニエル・フィルホ)

多分これがデビュー作だと思いますが

こちらも好演。

 

 

監督のルイ・グエッラ(ゲーハ)は

当時30歳ですが

実に冴えたところを見せています。

(残り30分のところにくると、力尽きてしまっているのがやや残念)

 

 

音楽はルイス・ボンファ

グエッラはナラ・レオンがパートナーだったこともあり

ブラジル音楽の著名なアーティストとも

交流がありますね。

 

 

1962年製作ですが

日活のヌーヴェルヴァーグ路線が好きな方でしたら

絶対に気に入ると思いますよ!

 

Scene from "The Unscrupulous Ones ( Os Cafajestes) "

www.youtube.com

 

映画は一時間でこれだけ出来る~日本フィルムノワールの佳品 ”ある脅迫”

 

これは上手い!の一言ですね。

上映時間が一時間ちょっとの

いわゆる添え物~プログラムピクチャーなんですが

下手な大作を観るより、ずっと面白い。

 

金子信雄西村晃は幼馴染。

職場も同じ銀行なのですが

出世コース一直線の金子に対して、

未だに平社員の西村は

卑屈なまでに頭を下げて接しています。

 

 

金子が本店へ栄転する直前、

怪しげな男(草薙幸二郎)が現れて

金子の不正の証拠を突き付けます。

「バラされるのが嫌なら、すぐに現金を出せ」

 

 

窮地に陥った金子

銀行強盗に変装して、金庫の金を強奪しようと計画。

 

 

その日の宿直は

西村でした。

 

 

金子の扮装は見破られてしまい

現金奪取はならず。

「驚かせて悪かったな。これはただの冗談、というか防犯訓練なんだ」

と言い訳をする金子。

 

 

絶体絶命の金子ですが

草薙が崖から転落して

不正が暴かれる恐れが消えます。

 

「これで安心して本店へ行ける。こんなちっぽけな町とはおさらばだ」

とほくそ笑む金子。

 

西村がそんな金子を呼び止めます。

そこで明かされた驚愕の事実とは・・・

 

 

金子と西村の丁々発止の演技合戦が見もの。

 

やたらに威張る↔ひたすら追従

その関係性が一気に逆転していく

ストーリー展開が小気味いいですね。

(原作は多岐川恭の同名短編小説)

 

(最後のカットでも、捻り~ツイストが効いています)

 

監督は蔵原惟繕 (くらはら・これよし)

当時30代前半で

これだけ冴えた映像に仕上げているのは

流石であります。

 

ある脅迫(1960年) 予告編

www.youtube.com

 

木、またはTREE

 

Appletree    Erykah Badu

www.youtube.com

 

 

 Lemon Tree  Peter,Paul and Marry   

www.youtube.com

 

Lemon tree very pretty

and the lemon flower is sweet

but the fruit of the poor lemon is impossible to eat

(words by Will Holt)

 

 

モダンJAPANESEホラー映画の共通項

 

海外のファンも多い

日本のホラー映画。

 

なかでも1998年公開の ”リング” (中田秀夫監督)は

続編が幾つも作られた超定番。

 

それから6年後に封切られた ”予言” (鶴田法夫監督)は

個人的には、このジャンルのなかでは

好きな作品なのですが、

ちょっと両者を比較してみましょう。

共通点が多いのですよ。

 

 

主人公は別れた夫婦

”リング” は真田広之松嶋菜々子

”予言” は三上博史酒井法子

 

元夫の二人はどちらも教職に就いています。

で、終始シリアス~不機嫌な表情。

そしてセリフや動作が芝居がかっている

~見得を切ってるような。

 

 

夫婦には子供が居るのですが

(”リング” では男の子、”予言” では女の子)

年齢も似通っています。

 

 

小道具~マテリアルとして

ビデオテープと

 

 

新聞(記事)が

どちらの作品にも登場します。

 

 

ベテラン男優の起用

(”リング” では沼田曜一、”予言” では山本圭。二人とも和服姿)

 

 

後にブレイクする女優の

デビュー時、あるいはごく初期の初々しい演技が

収められています。

(”リング” は竹内結子、”予言” では ”堀北真希”)

 

音楽を担当しているのは同一人物

川井憲次

 

そして上映時間がどちらも

95分

 

勿論、原作は異なるのですが

(”リング” は鈴木光司の小説、”予言” はつのだじろうの漫画)

「呪いの共通項」のようなものが

あるのかもしれませんね・・・

 

眠れない夜は二本立てで観るのもいいかも?

もっと眠れないか・・・

 

リング  予告編

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予言  予告編

www.youtube.com