今井監督の1964年度作品。
主演は中村錦之助ということで
圧倒的な強さ&華麗な刀捌きで
敵を次々切り捨てていくのかと思いきや、
そうでないんですね。
弱いんです、この映画の錦之助は。
剣の腕前もそうだし、精神的にも非常に脆い。
急に逆上したり、びくびく怖がってみたりと。
そこがね、今観ると面白いんです。
で、敵方の3兄弟がこれまた興味深い配役。
長男に神山繫。
次男に丹波哲郎。
三男役、誰だか分かります?
若き日の石立鉄男!ですよ。
70年代のあのアフロヘアーの容姿からは
想像できない初々しさです。
ちなみに共通するのは声の良さ、です。
ここがね、今の俳優さんと決定的に違うところですね。
この3兄弟と錦之助は些細なことから
殺しあうはめになっていくのですが
錦之助、怯えにおびえております。
うわー、約束が違う
俺は聞いてない
止めろ、止めてくれ~!
最期はもうボロボロです。
かたき討ちを題材とした時代劇は非常に多いですし
この作品がそのなかで最高峰ということは正直無いと思います。
(例えば小林正樹監督の傑作 ”切腹” と比べても。ちなみに脚本はどちらも橋本忍)
全体のスケール感も今ひとつなのですが
場面の切り替えが早いので、そういう意味では
却って観易いかもしれません。
(予算を潤沢にかけたテレビドラマのスペシャル版のような)
そして何より、カッコ良くない
錦之助が堪能できるという
今となっては貴重な1本なのです。