アラン・ドロンといえば
誰もが知るフランスの大スターですが
日本では取り分け(特にマダム層に)人気が高かった
時期があったように思います。
1970年代から80年代にかけてが特に。
スーツや車のCMキャラクターとして頻繁に登場&
パリに行ってドロンと一緒にディナーを楽しむツアーが企画されたり。
うっとり陶酔顔でインタビューしている日本の芸能人やリポーターを
見るにつけ、うひゃ~たまらんといった気持ちになりましたね、正直。
しかしドロンは、メッセージ性の強い
硬派な出演作も多く、この ”さすらいの狼”
(原題の L'Insoumis は反抗する者、抵抗者という意味合いでしょうか)
はその代表的な作品ですね。
監督は新鋭のアラン・カヴァリエ (ルイ・マルのもとで助監督)
脚本のジャン・コーは文学者でサルトルの秘書を務めていたことも。
撮影を手掛けたクロード・ルノワールは、あの有名な画家のルノワールのお孫さん
といった錚々たる製作陣です。
ドロン演じるは、アルジェリア紛争下
フランスの外人部隊に参加している
ルクセンブルク出身の青年。
高額な報酬に吊られ、政治地下組織に加わり
仲間とともに誘拐、監禁します。
しかしマッサリに惹かれるものを感じたドロンは
仲間の一人を射殺して、マッサリを逃がしてやります。
その際の撃ちあいで、ドロンも腹部に負傷。
ドロンは故郷の村を目指すのですが
身体の調子は悪化するばかり。
裏切者となった身に、復讐心に燃えるかつての仲間たちが迫ってきます。
マッサリは身の危険も顧みず
自らが運転して、ドロンを故郷の村へ連れて行こうとします。
なんとか生家に辿り着いたドロン
マッサリとはここで別れなくてはなりません。
(マッサリには夫があり、夫もドロンの逃走に協力しています)
気持ちの整理をつけようとするマッサリ
ドロンは家へ足を踏み入れるのですが
彼の肉体は限界を迎えていました・・・
この作品は公開時にさまざまなトラブルに見舞われ、
のちのビデオ/DVD化も相当に遅れたようです。
共演者の顔ぶれもやや地味ですし、華がある映画ではないのですが
シャープな動きの若きドロンは
ファンでなくとも一見の価値大いにあり。
個人的には(大きな役柄ではないのですが)
ヴィヴィアン・アティアの演技が素敵でしたね。
(唯一の?ユーモラスなシーン)