バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

本当に愛したのは兄だけ・・・禁断の、そして儚い妹の記憶 ”アガタ”

 

昨日に続いてマルグリット・デュラスの作品を。

1981年、デュラス67歳の心象ムービーです。

 


季節外れの人けのない海辺の別荘に

久しぶりに再会した兄(ヤン・アンドレア)と妹(ビュル・オジェ)

これが永遠の別離になることを予感しています。

 

かつて二人は兄妹の関係を越えた絆で結ばれていました。

現在はそれぞれ別のパートナーが居るのですが。

 

二人の視線は交差しません。

共に過ごした10代の夏の日々が

淡く蘇るだけです。

 

デュラス自身の体験をベースとしており

ナレーションもデュラスが担当しています。

 

 

しかし単なるプライベートな回想記ということには

したくなかったのでしょう。

 

オジェの後方に撮影カメラが見えます。

「これは映画ですからね」

というメッセージでしょうね。

 

 

こちらは実際のデュラスと兄のポール。

しかし兄は夭折し、同じ年にデュラスは

授かった赤ちゃんが死産という

辛い経験をしています。

 

 

映画の冒頭、オジェがソファに横たわっているのですが

お腹を押さえて、呼吸が苦しそうなカットがあります。

おそらくはデュラスの実体験が投影されているのでしょう。

 

 

また、エンディングのシーンは

朽ち果てた支柱が2本~かつて桟橋でもあったのでしょうか

が映し出されるのですが、

カメラは上から下に移動して

不自然に途中で動きを止めます。

 

 

その後、カメラが更に下がっていくと

もう一本の支柱があいだに。

 

 

視点が砂浜にまで降りてきて

水面にゆらゆらと3つの影が

陽炎のように揺れているところで

ジ・エンド。

 

本当は(許されることではないけれど)

好きだった兄の子供が欲しかった・・・

そんなデュラスの心象が投影されているとみるのは

うがち過ぎでしょうか。

 

 

なにを馬鹿なことを

と、デュラスに怒られそうですね・・・

(ちなみにヤン・アンドレアは当時のデュラスのパートナー)

 

Agatha ou Les Lectures illimitees   予告編

www.youtube.com