"THE MAGICIAN"
というタイトルの映画は多数製作されていますが
こちらはレックス・イングラム監督の
1926年作品。
アメリカ映画ですが、大々的にフランスでロケが行われています。
アリス・テリーは彫刻家。
制作中の巨大彫像が崩れ落ちてきて
半身不随の重症に。
それを救ったのがアメリカ人の若きドクター
イワン・ペトロヴィッチでした。
(”白い巨塔”を思わせるシーンですね)
アリスの退院後、
二人は愛し合うようになります。
そんな二人を憎々し気に見つめる
一人の男(パウル・ブェゲナー)
「既にある命を救ってもたいしたことはない。俺は命そのものを創造してやるぞ!」
おまけに催眠術を操る
ヤバい人物だったのです。
パウルはアリスに接近し、彼女を意のままにしてしまいます。
「よし、この女の生き血を使って人間の生命創造だ!俺様は天才なのだ」
人里離れた古城に拉致されたアリス
果たして彼女は無事でいられるのでしょうか、
救出に向かうイワンは恐怖の実験を阻止できるのか・・・
ということで極めて明快なストーリー進行
ロマンス、サスペンス、ユーモア、ホラー
のトッピングがバランスよく並んでいます。
加えて、ドイツ表現主義に影響された
シュールなシーン(悪夢)もあるという大サービス。
(この悪夢のなかでアリスを襲うのは、ローマ神話に登場する半人半獣のファウヌス神。冒頭でアリスが制作していた彫刻がまさにファウヌスでした)
役者陣のなかでは
なんといってもドイツの怪優
パウル・ヴェゲナーの存在感が圧倒的。
またアリス・テリーは撮影当時
監督の奥さんでしたね。
この映画、弁当で言えば
長年愛されてきた
おかずの充実した幕の内
といったところでしょうか。
IMAGE OF HELL from "THE MAGICIAN"