ポランスキーの長編2作目(1965年)
この3年後に有名な ”ローズマリーの赤ちゃん”
が登場するわけですが、モチーフは共通していますね。
どちらもアパートメントの室内が主な舞台(ロンドン/ニューヨーク)
精神の限界ギリギリ状態に陥ってしまうのが若い女性
悪夢&幻想的なシーンが盛り込まれている点など。
ロンドンの下町に姉と同居して暮らすドヌーブ
美しい外見に惹かれ、言い寄ってくる男も居るのですが
潔癖症(アパートに帰宅するやいなや、洗面所で足を洗う)
過敏症(生活音が耐えられない)
である彼女は、他者と触れ合うことに嫌悪感を隠せません。
職場(有閑マダムのためのエステサロン)でも
心ここにあらず、客に怪我をさせてしまいます。
姉は恋人とパリへ旅行に。
一人部屋に残されたドヌーブは頻繁に悪夢に襲われるようになり、
外界との接触を喪失していきます。
アパートの大家やドヌーブにご執心の若い男が
部屋を訪ねてくるのですが
ドヌーブにとって彼等は、もはやコミニュケーションが不可能な
乱入者~自分を傷つける存在以外のなにものでもありませんでした。
ドヌーブは自分を守るために刃物を手に取り・・・
”子供帰り”(頻繁に爪を噛む、動作が幼児のようになっていく)
を演じるドヌーブの演技が秀逸です。
室内のシーンでは露出度の高いガウンを着たままですし
まさに体当たりの熱演。
幻想場面では
部屋の大きさが拡大されていますので
(実際のアパートはこれほど大きくはない)
幼少時に住んでいた家の記憶が混入しているのでしょう。
ラストシーン、子供時代の家族集合写真がクローズアップされますが
にこやかな父母や姉のなかで
ドヌーブだけは茫然とした表情で、カメラから視線を外しています・・・
全体のまとまりとしては、むしろ
”ローズマリー~”より勝っているのではないでしょうか。
サイコスリラー系の傑作、と呼べる逸品です。
Repulsion Trailer