バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

”まだらキンセンカにあらわれるガンマ線の影響”~ポール・ニューマン監督の知られざる傑作

 

これは素晴らしいなと。

あまり知られていませんし

タイトルも長くて訳分からん、ですが。

 

 

ジョアン・ウッドワードは夫に先立たれて

二人の娘(ロバータ・ウォラック/ネル・ポッツ)

と三人暮らし。

 

 

ジョアンは口が悪く、絶えず不機嫌。

すぐに喧嘩腰になるので

隣近所から疎まれています。

 

 

長女のロバータ

そんな母の物真似を学校で披露して

教師やクラスメイトから拍手喝采

チアリーディング部で活動する外交的な性格です。

 

 

一方次女のネルは口数が少なく勉強熱心。

学校の自由研究でキンセンカマリーゴールド)の

発育実験を自宅でおこなっています。

 

 

ネルはうさぎも飼っているのですが

ジョアンは事あるごとに

”そんな臭い生き物なんか邪魔だ、捨ててしまいなさい”

とネルを𠮟りつけます。

 

この家族の構図が提示されてますね。

母&長女チーム

次女&うさぎチーム

と。

 

 

ジョアンは煙草や酒を欠かしません。

子供たちの前でも朝から

吸いまくり、飲みまくり。

 

ロバータは気にしないんですね。

なのでジョアンはロバータと話す時はリラックスしています。

それこそ姉妹のような雰囲気。

 

しかし優等生タイプで

自分からは口を開かないネルに対しては

どう接していいか分からない~故に詰問調になってしまい

キツい言葉を浴びせ続けています。

 

 

ビールをうさぎにかけるジョアン。

物言わぬうさぎとネルが

ジョアンの中で

一括りになっていますね。

 

ネルは地道にキンセンカの実験に取り組んで

学校のコンクールで表彰されます。

 

受賞パーティーの席で

実験の結果を発表するネル。

 

 

ガンマ線を浴びない花は普通に育ちます。

ガンマ線を大量に浴びた花は枯れます。

ガンマ線を少量浴びた花はより美しい新種になる可能性があります。

私はそれを実験で確かめることができました。

 

これは強烈なメッセージになっていて

ガンマ線が母親(からの毒のある態度)

キンセンカが自分と姉の比喩ですね。

 

自分と姉は子供だから母親と一緒にいるしかない。

家からは出れない(移動能力がない点で花と同じ)

ガンマ線を浴び過ぎてしまうと危険だが~

これは姉のことを指していますね。

自分はうまくそれをかわして成長していこうと思う。

 

といった決意表明になっています。

 

 

家庭内での姉妹の会話

姉妹と母親の会話

立ち位置(距離感)

各自が興味を持つ&持たない対象の相違

などが非常に細かく描かれています。

 

エンディングでは

ネルのモノローグが流れるのですが

 

"MAMA, I DO NOT HATE THE WORLD"

 

という一言が。

(聴き取りが間違っているかも。私の耳にはそう聞こえました)

 

ネルは決して母親や姉を否定したり馬鹿にはしていないんですね。

母親は遂にうさぎを殺してしまい、わざわざネルのベッドに

死骸を置いたりもするのですが

ネルは泣き叫んだりしません。

 

お母さん

お姉ちゃんも

この家も 学校も この町も

そんなに悪いものじゃないと思っているよ。

いつの日か新しい世界がやってくるかもしれないし。

 

という優しい視線が感じられますね。

 

 

母親のジョアン・ウッドワードはニューマンの奥さん。

次女役のネル・ポッツは二人の子供と

ある種のファミリー映画ですが

両者とも最高の演技を披露しています。

 

また単に

姉→ダメ、妹→良い子

という図式にしているのではなく

姉は自分が母親に似ていることを自覚していて

それに向き合おうとしています。

(前半ではお気楽調、後半になると深く考え込むシーンが多くなる)

演じたロバータ・ウォラックも大健闘。

 

親子(兄弟姉妹)関係をテーマにしたドラマは

それこそ星の数ほどあると思うのですが

個人的にはベストの一本であります。

 

機会がありましたら

是非本編を。

 

scene from "The Effect Of Gamma Rays On Man-in-the-moon Marigolds" (1972)

www.youtube.com