中村登監督の1951年作品。
大作、話題作、注目作といった映画ではありませんけど
実に愛すべき1本であります。
テーマはずばり家族愛。
戦後間もない時期ですから
まだまだ生活が大変なわけで
実際に色々と問題が持ち上がるのですが、
親は子を
子は親を
夫は妻を
妻は夫を
まず第一に考えるわけですね。
自分のことは差し置いて。
次女役に岸恵子
後のクールビューティーな雰囲気とは
全然イメージが違いますね。
高峰秀子が長女で
笠智衆がお父さんです。
で、お母さん役が山田五十鈴。
これがですね、絶品なのです。
戦前の ”祇園の姉妹” “浪華悲歌”
戦後の黒澤作品などからすると
「強い、あくまで強い」人物造形かと思うのですが
実に優しい、慈愛に満ちた母親を演じています。
こちらは冒頭のシーンですが、
家族揃っての夕食。
山田五十鈴は(残っていた)パンのかけらを
味噌汁に浸して食べています。
夫や子供たちにはご飯をなるべく多く
食べさせたい、の一心なんですね。
私たちもパンでよい、と言うのですが
”大丈夫、美味しいから”
とそれを断ります。
画家志望の高峰秀子はなかなか
作品展で結果を出せません。
しかし、いつ何時でも
山田五十鈴がカバーします。
まさに
母の愛は何よりも深し。
ストーリー的には正直
ひねりも無く、ラストの展開もかなり安直なのですが
(同系列の成瀬巳喜男監督の名作 ”おかあさん” と比べても)
なにより、
山田五十鈴の芸達者ぶりにリスペクト!
の佳作であります。