会話がほとんど無くなって、笑顔が消えた夫婦の日常を淡々と描く・・・
まさに成瀬巳喜男の真骨頂の一作(1953年)ですが
他の名作群(”めし” ”浮雲” ”おかあさん” ”山の音” ”流れる”)
などと比べると、あまり話題に上ることがありませんね。
覇気のない中年会社員の上原謙
どすこいタイプの奥さんに高峰三枝子
上原は押しの強い妻に閉口しています。
勤め先の同僚の丹阿弥谷津子、
上原に好意を持っていて
二人の距離が接近していきます。
(奥さんといる時とは打って変わって、終始ニコニコ顔の上原)
丹阿弥には離婚歴があり、小さな子供を女手一つで育てています。
優柔不断な上原、なかなか踏ん切りがつきません。
二人の仲は高峰の知るところとなり
直情型の高峰は直接、丹阿弥と会って決着をつけることに。
さて女の闘いの結果やいかに・・・
成瀬監督といえば同じ高峰でも
高峰秀子が名コンビですが
確かにその組み合わせと比べると
やや相性が今一つかな、という印象も受けますね。
興味深いのは助演陣で、
夫婦の家の下宿人に三国連太郎
高峰の妹役に新珠三千代
二人とも若い!
また戦前の大スター、高杉早苗の姿も。
かなり貫禄が付いていますが、相変わらず美しい。
そして後のイメージとはまったく異なる
単調になりがちなストーリーに彩りを添えています。
成瀬映画定番の後ろ姿ショット。
さて上原の下した決断は?
黒澤や溝口映画と対極にある
”ズルズル~どっちつかず” の96分間を
機会がありましたら、どうぞ。
「まいまいつぶろ」高峰秀子著(新潮社)