バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

舞台が格上、映画は格下?

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映画を観ていて

すぐに気づくことがあるんですね。

「あっ、この役者さん 演劇畑出身の人だろうな」

って。

 

そういうバックグラウンドがある人って

声の出し方、響き方が違うんですね。

そもそも声の質が良いし、発声が綺麗で聴きやすい。

ひそひそと囁きあうようなシーンでもしっかりと聴き取れるんです。

 

生の舞台が主な仕事場ですから、鍛えられてるわけですね。

厳しく徹底的に。

 

なので、オーデションに合格していきなり主役に~

という経歴の人と比べるとその差は歴然です。

 

そういう意味では

脇を固める劇団所属の俳優さんが居たからこそ、

歴代の日本映画が成り立ってきたと言っても

過言ではないくらいです。

 

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以前は、映画を下に見る

という傾向が強かったんですよね

役者さん自身に。

 

有馬稲子

「・・・わぁ、これは傑作だと思ったんですよ・・・客席に座って見たらね、三分の一にカットになっていた。ズタズタに切られていた・・・あまりにショックだったんで、映画に対する、何というのかしら、夢みたいなものが砕かれたような気がしてね・・・」

 

山田五十鈴

「黒澤先生と喧嘩しちゃったんですよ。(映画の音入れのために、出演が決まっていた舞台を休んでくれと言われて)・・・それでとうとうアフレコに行きました・・・それで舞台もご破算。もう、これで一生、映画には出ませんって決意したんです」 

 

演技者としての自分の力を存分に試したい(&その自負がある)

そういう役者はまず、演劇人であるべきだという考えが

強かったのでしょうね。

 

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一方、それに異を唱える女優さんも居ます。

 

高峰秀子

「あのね、私、芝居の人、嫌いなんだな。なんか気持ち入れすぎちゃって・・・芝居の人は幕が開くと序幕から二幕、三幕って順序にやるけれども、映画ってのはもしかするとラストシーンからだって始める。だから気持ちの入れ方だって、ちゃんとはじめから計算しとかないとね。舞台の人は、映画俳優のことをなんかちょっと低く見るけど、舞台の人より映画俳優のほうがしんどいよ」

 

天才子役として幼少時から膨大な数の映画に出演してきた

経験があるからこそ言える、これはまた含蓄のある言葉です。

 

おそらくは

舞台には舞台の

映画には映画の

難しさと面白さがそれぞれにあって、

どちらが合っているかは役者さんの個性に依るのでしょうね。

(両立させるタイプの人もいますが)

 

いずれにしても、その頂点を極めるのは

至難の技であることに違いはないようです・・・

 

参考図書

「君美わしく」川本三郎著・文春文庫

仲代達矢が語る日本映画黄金時代」春日太一著・PHP新書

「バラと痛恨の日々」有馬稲子著・中公文庫

「まいまいつぶろ」高峰秀子著・新潮社

「巴里ひとりある記」高峰秀子著・新潮社

根津甚八」根津仁香・講談社

 

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